市井の人々のささやかな日常から、現代社会を照射するドラマが生まれる。
注目の劇作家・演出家 赤堀雅秋が、豪華出演陣と共に紡ぐ、閉塞した現代に生き、逃れようのない"日常"を過ごす人々の、哀しくも愛おしい物語――。
左から: 光石研 大森南朋 田中哲司 赤堀雅秋
赤堀雅秋の新作『同じ夢』が、2月5日(金)シアタートラム(三軒茶屋)にて初日を迎えました。
左から: 大森南朋 光石研 田中哲司 赤堀雅秋 麻生久美子
初日公演を終えた作・演出の赤堀さんと出演者よりコメントが到着!!
赤堀雅秋(作・演出) :稲葉和彦役
スタッフ、キャストの皆さんのおかげで本当に良い初日を迎えることができました。この作品は役者の精神、身体のわずかな変化次第で、お客様の想像力を何倍にも喚起させられるような芝居ですので、これから更に良くなっていくのではと感じています。執筆の最中は、この先の展開はどうなるのか自分でもヒヤヒヤしながら書いていた部分もありましたが、最終的には納得のいく作品を作ることができたと自負しています。明日以降も、真摯にやっていきたいと思います。
左から: 麻生久美子 光石研 田中哲司
光石 研:松田昭雄役
これからこの作品の長い旅が始まりますが、毎日毎日、緊張を切らさずに演じていきたいです。お客様からの笑いや反応も本日いただきましたが、稽古場でやってきたことを基に、自分たちは自分たちの世界の中で頑なに頑張っていき、とにかく赤堀さんが僕たちに書いてくださった世界を忠実に再現したいと、それだけを思っています。
麻生久美子:高橋美奈代役
赤堀さんも仰ってましたが、毎回気が抜けないお芝居なので、この緊張が最後まで持続するのかなと思うと気が重くもあります(笑)。ですが予想以上にお客様が笑ってくださり、お客様と一体になった感じがして楽しみや発見がありました。私が演じるのは複雑な面を持つ女性なのでこれからも模索していきたいですし、そうすれば、私自身もっと楽しめるのではないかと思います。
大森南朋:田所元気役
赤堀さんが書かれた世界の人々、そこに流れている空気を、これからもぶれないように立ち上げていくために、この初日の緊張感を継続しなければと心に留めています。今日の初日はひとつの完成ですが、ここからもしかしたらまた違う完成の形、新たな世界が見えるのではないかと思っています。緊張感を持ちつつ、楽しみながら演じていきたいです。
木下あかり:松田靖子役
ものすごく緊張しました。初日の緊張感がお客様にもあるのかなと思っていたのですが、沢山笑ってくださって、やはりそれは赤堀さんの台本の力だと思いました。赤堀さんの台本に素直に演じていれば、お客様も感じ取ってくださるんだと。今日の新鮮さを毎回忘れずに演じていけたらと思います。これからますます、良くしていきたいです。
田中哲司:佐野秀樹役
無事初日の幕が開いて良かったです。それと同時に、自分たち次第で良くも悪くもなる可能性を秘めた"危ない"作品だと感じましたので、共演者皆で意見を交わしながら、これから更に気を引き締めていきたいと思います。これまで二作立て続けに挑んできた翻訳作品とは違う面白さが本作にはありますので、取り組める嬉しさを感じています。
左から: 大森南朋 木下あかり 光石研 田中哲司
《 みどころ 》
2014、15年と、規模の大きな舞台での劇作・演出にて、新境地を切り開いた赤堀雅秋。今作では、シアタートラムという小空間で、強力な俳優陣を得て、赤堀にしか書くことのできない「壮大でミニマムなドラマ」を創り上げました。本作のみどころをご紹介します。
光石研
ドラマを起こさず、ドラマを紡ぐ
本作において赤堀は「ドラマを起こさずにいかにドラマを紡ぐか、人間を描けるか」に挑んだと言います。
ドラマチックな展開や、大きな事件が起こるわけでもなく進む物語は、まさに市井の人々が営む日常の風景を切り取ったかのようです。登場人物たちが交わす無為な会話や長い静寂、また人知れず正気と狂気の間を振れながら踏みとどまる様などがひとつひとつ丁寧に紡ぎ出され、ごくありふれた日常を送る人々がそれぞれに内包する、ミニマムで壮大なドラマが立ちのぼります。
左から: 大森南朋 木下あかり 光石研 田中哲司 麻生久美子 赤堀雅秋
社会への視点
登場人物たちが生きる日常は、日本社会の現状をありのままに映し出します。寝たきりの父親と同居する男、女手ひとつで娘を育てるシングルマザーなど、それぞれの生活の背景に日本が抱える重い現実が見え隠れします。
様々な問題を抱えながらも現状を受け入れざるを得ず、思考を停止させながら生きる人々の哀しさと愛おしさが描かれ、更に、今の日本社会に流れる停滞した空気が、舞台上を濃厚に覆います。
どこか既視感を覚えるような郊外の一軒家というミクロの世界から、現代社会を照射する―― 時代の奔流の中で生きる生活者たちの機微を描き出してきた赤堀ならではの手腕が光ります。
左から: 光石研 麻生久美子 田中哲司 赤堀雅秋
一筋縄ではいかない俳優たちが織り成す、濃密な空気
「ドラマを起こさず、ドラマを紡ぐ」という赤堀の挑戦を支えているのは、強い個性と類まれなる演技力で、演劇・映像界を席巻する俳優陣です。
永遠に続くように感じられる、逃れることのできない日常にふと絶望したり、小さな「夢」を見たり――。そこに佇むだけで説得力を持つ俳優たちが創り出す濃密な気配、台詞が積み上がっていき、誰もが抱える哀しみや切なさ、人間存在の愛おしさが浮かび上がります。
左から: 木下あかり 麻生久美子 光石研
《 ストーリー 》
千葉県船橋市郊外。賑わっているとは、どう間違っても言えない商店街の一角にその精肉店はあった。
主の松田昭雄(光石研)は二代目。
初代である彼の父は、奥の和室に寝たきりになって久しい。この家に住むのは昭雄の娘・靖子(木下あかり)との三人。
店には先代から勤める、胡散臭い見てくれの従業員・稲葉(赤堀雅秋)がいる他、ヘルパーの高橋(麻生久美子)が老父の世話に通ってくる。
近所の文房具屋で飲み仲間の佐野(田中哲司)も、大した用もないのに、この家に入り浸っている。
真冬のある日。
この日だけは、常にない客が松田家を訪れる。10年前、昭雄の妻は交通事故で死んだ。
その加害者である田所(大森南朋)が、命日になると毎年欠かさず詫びと焼香のためにやってくるのだ。
どうしようもなく流れる時間の中で、薄れていくのは憎しみと哀しみ。反比例するかのように増していくのは......。
ささやか過ぎて笑えるくらいの日常。でも、見方を変えればそこは出口の見えない「牢獄」でもある。
左から: 光石研 麻生久美子
左から: 光石研 大森南朋
世田谷パブリックシアター『同じ夢』
(舞台写真)撮影:細野晋司
《 公演概要 》
『同じ夢』
2016年2月5日(金)~2月21日(日)
会場: シアタートラム
【作・演出】赤堀雅秋
【出演】
光石研 麻生久美子 大森南朋 木下あかり 赤堀雅秋 田中哲司
【チケット料金】(全席指定・税込)
一般: 6,800円 高校生以下: 3,400円 *当日券発売あり
【国内ツアー】
松本=2月24日(水)~25日(木) まつもと市民芸術館 実験劇場
水戸=2月27日(土)~28日(日) 水戸芸術館 ACM劇場
名古屋=3月1日(火)~2日(水) 愛知県産業労働センター ウインクあいち 大ホール
兵庫=3月4日(金)~6日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
広島=3月8日(火)~9日(水) JMSアステールプラザ 中ホール
福岡=3月12日(土)~13日(日) 福岡県立ももち文化センター 大ホール