宝塚歌劇宙組トップスター、凰稀(おうき)かなめのサヨナラ公演が11月7日、兵庫・宝塚大劇場にて開幕。ミュージカル『白夜の誓い-グスタフⅢ世、誇り高き王の戦い-』、ショー『PHOENIX 宝塚!!-蘇る愛-』の2本立てで上演中だ。
『白夜の誓い』は、1770年代のスウェーデンを舞台に、北欧史に名を残すグスタフⅢ世の波乱に満ちた生涯を描いた物語。スウェーデンにロココ文化を花開かせるとともに、腐敗した貴族政治を改革、大国ロシアと戦争し、大勝利を収めた人物だ。
スラリと伸びた手脚に、クールかつノーブルな雰囲気の佇まい。しかしその内には、宝塚歌劇への熱い情熱を秘めるトップスター。ラストステージで演じるグスタフⅢ世は、そんな凰稀にぴったりの役だ。抜群のスタイルには、華やかな貴公子の衣装がよく似合う。国民のことを一番に考えて平和な国にしようと、自分の想いや信じたことには真っ直ぐに突き進むグスタフは、トップとして、組やファンのことを第一に考えて歩んできた凰稀の姿に重なる。
グスタフの妻ソフィアを演じるのは、娘役トップスターの実咲凛音(みさき・りおん)。最初はプライドが高く、気高い雰囲気をまとわせながら、次第にグスタフへの愛を深めていく女性の気持ちの変化を丁寧に表現。次期トップスターの朝夏(あさか)まなとが演じるのは近衛士官長のリリホルンで、さまざまな人間の板挟みになり、葛藤、苦悩する役どころ。また、凰稀と同様、本作で退団する緒月遠麻(おづき・とうま)は、グスタフの幼なじみで側近のアンカーストレム役。同期で同時退団という関係性から、このふたりの印象的なシーンも多く作られている。
第2幕のショー『PHOENIX 宝塚!!-蘇る愛-』は、凰稀をフェニックスに見立てて構成。サヨナラ公演らしく、演出家・藤井大介の宙組への愛がたっぷり詰まったステージだ。オープニングでは、大階段を覆い尽くすほどの大きなマントを羽織ったフェニックスが登場。その美しさと壮大さに一瞬で引き込まれ、一気に華やかなステージが展開。凰稀がコミカルな七変化で楽しませる場面、組子に見守られて羽ばたいていく場面、凰稀から新たな宙組へエールを送るような場面......と、盛りだくさん。緩急つけた演出で、クールかつ熱い情熱みなぎる凰稀の魅力が引き出されている。
両作ともに、個々の魅力、組としての圧倒的なパワーを感じるステージ。気高きトップスターのラストステージを、じっくりと堪能してほしい。
公演は12月15日(月)まで兵庫・宝塚大劇場にて。2015年1月2日(金)から2月15日(日)まで東京宝塚劇場にて上演される。チケットは宝塚大劇場公演は発売中。東京宝塚劇場公演は12月7日(日)より一般発売開始。
取材・文:黒石悦子
撮影:三上富之