ルイス・キャロル原作『不思議の国のアリス』を下敷きに、仕事や子育てに悩む現代女性アリスが、ワンダーランドの住人たちと出会い、冒険を通して成長する姿を描いた物語。2012年初演時には主演の安蘭けいが菊田一夫演劇賞を受賞した話題のミュージカルが、一部キャストも新たに再演される。新キャストのひとりでアリスを不思議の国へと誘う、ウサギ役に抜擢された平方元基に意気込みを訊いた。
平方元基は2011年初ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』で注目を集めて以降、『エリザベート』『マイ・フェア・レディ』などに出演。取材時は、世界初演に沸いた『レディ・ベス』でプレイボーイなフェリペ王子を熱演中と、出演作ごとに存在感を増す期待の若手俳優だ。「それぞれが生きてきた中で譲れないものがあって。それを持って舞台に上がっていれば、どんな役でも輝くんだなと。日々先輩方の姿には学ぶことが多くて。時々吸収しすぎてパニックを起こすけど。あたふたする感じは、次のウサギ役に活かせるかな(笑)」
物語の進行役でもあるウサギはひとり懐中時計を片手にドタバタと駆け回り、アリスに叱られては反省を繰り返す。少々ドジッ子な役回りだ。「あそこまで人を笑顔にさせるキャラクターは初めて。会う人みんなに『ぴったり!』と言われる。確かに、今まではシュッとした二枚目役が多かったけど、実際は違うぞ!というのを出せる役かな。全身着ぐるみですが、衣装が破れるくらい踊りたい!」
全編をフランク・ワイルドホーンの心浮き立つ楽曲で彩る、とびきりハッピーなミュージカル。「ワイルドホーンさんの楽曲は、伸ばして伸ばして音域も上げて、最後にどーん!と感動が押し寄せる、ザッツ・エンタテインメントな音楽。体力が必要だし、歌える人にしか歌わせない!と言われているようで、そこは負けたくない。先輩たちのように、隅々の細胞まで沸き立つような歌声を届けられたらいいな」。また、一場面のみだが、原作者のルイス・キャロルとしても登場する。落ち込むアリスに声をかける、メッセージ性の強いソロナンバーは聴きどころだ。「実年齢を超える役も初めてなので不安もあるけど、気負わずにぶつかりたい。
キャリアウーマンの主人公を筆頭に、猫や芋虫、謎めいた帽子屋にハートの女王まで。ブロードウェイ版のオリジナル衣装をまとったキュートでポップなキャラクターたちが、歌い踊る約3時間! 「メッセージ性の強い作品だけど、それを覆い隠すぐらいハッピーなミュージカル。ひとりでに動く椅子が出てきたり、扉をどんどん開けていく演出が、人の心に入り込んでいくようで。気づいたら前のめりで観てしまう。ひとつのアトラクションだと思って楽しんでほしい。そのためにもまず、自分が誰よりも楽しんでいたいですね!」
11月から東京・大阪・愛知にて上演。東京・愛知公演はチケット発売中。大阪公演は9月21日(日)より一般発売開始。なお、チケットぴあでは一般発売に先駆けて、インターネット先行先着を8月24日(日)23時59分まで受付中。
取材・文:石橋法子