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石丸幹二が壮大な復讐譚をドラマチックに魅せる『モンテ・クリスト伯』上演中
石丸幹二が主演するミュージカル『モンテ・クリスト伯』が現在、東京・日生劇場で上演中だ。ヨーロッパ、韓国と上演を重ねたヒットミュージカルの日本初演。音楽は『ジキル&ハイド』などを手掛けたフランク・ワイルドホーンが担当している。
原作は日本でも古くは『岩窟王』として翻訳された、アレクサンドル・デュマのベストセラー。時代はナポレオン失脚直後。船乗りエドモン・ダンテスは航海中にナポレオンの側近からある手紙を預かる。航海後、恋人のメルセデスと婚約し、船長への昇格も決定、幸せ絶頂だったエドモンだが、その手紙が原因でエドモンを妬む者たちの手により投獄されてしまう。彼は獄中で出会ったファリア神父に知識や剣術を学び、14年の獄中生活ののち脱獄を果たし、モンテ・クリスト伯と名乗り自らを牢獄へ送り込んだ男たちに復讐を開始する...。
文庫本7冊の大河小説を、テンポ良くスリリングにまとめた構成が上手い。善人と悪人の対比が明確で、エドモンがひとつずつ復讐を果たしていくさまはわかりやすい勧善懲悪型であり、痛快だ。映像を効果的に使った演出、さらに日本でも人気のワイルドホーンによるドラマチックな楽曲もエンターテインメントに徹していて楽しい。主人公のエドモンを演じる石丸は、疑いを知らない純粋な青年時代から絶望を経て復讐の鬼となる男の人生を、持ち前の美声で情感たっぷりに演じる。特に脱獄後、モンテ・クリスト伯として敵たちの目の前に現れる瞬間の凄みが印象的。メルセデス役の花總まりも、石丸扮するエドモンと寄り添うように、娘時代の可憐さ、年を経ての落ち着きを演じ分けていく。中心に立つ主人公とヒロインの華やかさが、この壮大な作品に見事にマッチして、物語のドラマチックさを増幅した。
またなんと言っても岡本健一、石川禅、坂元健児の悪人3人衆の憎憎しさが良い。自らの欲望に執着する岡本、自己保身の石川、小ずるい金の亡者である坂元と、同じ"悪"でも三者三様。3人が歌うナンバー「罪を着せろ」はその個性が出ていてとても面白いシーン。悪役が上手くてこそ、復讐の物語は面白みを増すのだと改めて感じさせられた。
しかしこの物語は、復讐がゴールではない。その先にあるのは"許し"であり、それを包む"愛"。エンターテインメントの中にさらりと人間の深淵を描き、19世紀に作られた物語から現代に響くメッセージをわかりやすく生み出した。東京公演は12月29日(日)まで。その後、1月3日(金)から5日(日)に大阪・梅田芸術劇場 メインホール、1月11日(土)・12日(日)に愛知県芸術劇場 大ホール、1月18日(土)・19日(日)に福岡・キャナルシティ劇場でも上演される。いずれもチケットは発売中。