■劇団四季『リトルマーメイド』が出来るまで vol.3■
劇団四季の待望の新作ミュージカル『リトルマーメイド』、稽古場レポートの第2弾です。
今度はヒロイン・アリエルの稽古場です。アリエル役候補として発表されているのは、谷原志音さんと秋夢子さんのふたりですが、この日は秋さんは別の舞台へ出演中のため、谷原さんのみ。
エリック王子の稽古同様、演出補のクリスチャン・ダーハムさん、音楽監督のマイケル・コサリンさんが丁寧に、丁寧に、ひと言ずつのキャラクターの心情を説明、それに反応して短いシーンを何度も繰り返しトライアルしていく俳優さん...という、繊細な稽古場です。
海の上の世界へ来たアリエルが喜びを歌うナンバーでは、
「今、憧れ続けた場所にきて、アリエルは一番いい時を迎えている。でも、どこか罪の意識がある。たとえば、凄く素敵なパーティに来たんだけど、友達は置いてきてしまった、友達とこの喜びを分かち合えない...といったような感情。嬉しいだけではない"感情の層"を見せてください」とマイケルさん。
クリスチャンさんからも「あなたが見ているのは、憧れ続けた世界。ただ「きれいだ」だけではない。今自分が"何を"見ているのかを考えて」と重ねて言葉が。
「エチュードとして、"涙が溢れそうな感覚"で一度歌ってみてください。悲しいから出てくる涙か、嬉しいから出てくる涙かはわからないけれど、とにかく涙が溢れそうな感覚で」
というような稽古も。
こちらはクリスチャンさん。
複数あるアリエルのソロナンバーを稽古していく谷原さんですが、マイケルさんは1曲歌い終わった後、「今の感情を留めたまま、次のナンバーを歌ってみましょう」といったような稽古手段もとっていきます。
歌うナンバーにより、アリエルの成長度合いも違ってきます。
地上への憧れから、そこへ行かねばならないという思いへ、そして決意へ......。
そんな、段階を経る気持ちなども、丁寧に演出がつけられます。
もちろん、「そこは裏声ではなく地声でやってください。...うん、その方がいい。絶対そっちで!(笑)」(マイケル)といったような、技術的な面もバシバシ指摘が入っていきます。
地声で力強い決意を歌いあげる谷原さん。
特に厳しい指導が入ったのは、谷原さんが製作発表の場でも披露した名曲『パート・オブ・ユア・ワールド』の部分。
「なんだっけ...足!」というセリフがありますが、
「これは思い出せなかったのではない。むしろアリエルはそのこと(足)ばかり毎日考えている。この言葉は敵(地上)の世界の言葉だから、禁じられた言葉なんだ。言ってはいけない言葉だから言いよどんだんだ」
というマイケルさんの説明に、目を見開いて聞き入る谷原さん。
ほかにも「ほら見て、すごい宝物でしょ、と言っているが彼女にはそんなものはどうでもいいんだ。だって彼女はそれを全部捨てても足が欲しい。でも自分が集めた宝物でもあるから、大好きな気持ちは捨てきれるものではないという部分も残して」という難しい注文も。
大量の指摘を受け、歌い終わった谷原さんに「どうだった?」とマイケルさん。
「今まで考えていたことと真逆だった部分もある。まだ整理できていないけれど、歌いながら、この先の稽古でどうやっていけばいいのかがだんだんわかってきました」と谷原さん。
ところで谷原さん、くるくる変わる表情がとってもキュートです。ちなみに『パート・オブ・ユア・ワールド リプライズ』では
「エリックの頭の中にこびりついているのは、そのフレーズです。だからそこは完璧に美しく歌ってほしい」という、ざっくりとしたようで、ものすごくハイレベルな要求が!
谷原さんもちょっと笑ってしまってました...。
そして、「完璧に美しく」歌う谷原さん!
あっ、よく見ると、ネイルも『リトルマーメイド』カラーですね。
こちらは、「ここはこんな感じで」と稽古場ピアノを自ら弾くマイケルさん。白熱の稽古場でした。
公演は4月7日(日)に東京・大井町の積水ハウスミュージカルシアター 四季劇場[夏]にて開幕です!