■『エリザベート』への道 2012 第32回■
6月20日、帝国劇場にて「"ルドルフ"集合スペシャルイベント」と題したイベントが行われました。
ともに晩期のハプスブルク帝国を描いたミュージカル『エリザベート』と『ルドルフ ザ・ラスト・キス』の連続上演を受けての催しです。
聡明で周囲から皇太子として期待されながらもマイヤーリンクで謎の死をとげ、そのドラマチックでミステリアスな人生が人を惹きつけ、多くの小説や映画などの題材にもなったルドルフ。
その彼は『エリザベート』ではヒロイン・エリザベートの息子として、
そして『ルドルフ ザ・ラスト・キス』では主人公として登場しています。
同一人物ですが、描かれ方が随分違っているので、見比べるのも面白いかも。
イベントには、『ルドルフ ザ・ラスト・キス』から井上芳雄、
『エリザベート』からはトリプルキャストでルドルフを演じている大野拓朗、平方元基、古川雄大が出席。
ルドルフ4名が揃う、まさに"ルドルフ集合!"なイベントになりました。
来月の『ルドルフ』で主演、そして2008年の日本初演でも主演した井上さんは、2000年の『エリザベート』ルドルフ役がデビュー作でした。
『エリザベート』の舞台セットに井上さん!
これは...テンション上がります!
『ルドルフ』については
「再演ということですが、中身はほとんど新作。台本も変わっていますし、曲も入れ替わったり、なくなってる役もあります。ストーリーはさらにわかりやすくなった。今回はデビッド・ルヴォーさんがウィーンのために時間かけ手直ししたものを、また日本バージョンで新しく作り変えています。ほとんど新作って言ってもいいんじゃないかな」とアピール。
そして演出のルヴォーについては「本人がものすごくセクシー。フェロモン漂わせて演出してる(笑)」と話し、「ルヴォーが言うには、今回のルドルフのテーマは"セクシャリティ"なんです。生か死か、というのはある意味、色っぽいことだって語ってるので、前回とはそこが違います。まあ僕もそろそろ、あるならば、色気を出してもいいかな、ということで(笑)、それが日々ルヴォーによって引き出されていますね。ルヴォーはひとつひとつのシーンの作り方、次のシーンへのつなげ方、歌ひとつとってもなんでそれを歌うのか、どう歌いだすのか、すごく明確に考えを持っていて、毎日毎日その秘密みたいなものを教えてくれるので、刺激があります」と話していました。
また、稽古場での面白エピソードを訊かれた井上さん。
「今回アイススケートのシーンがあって...前回もあったんですが僕の役はアイススケートをしなかったのですが、今回はルドルフも相手役のマリーもスケートするってことになっちゃって。僕にとっては全然!面白くないんですがハタから見ていると面白いかも」とのこと。
練習が憂鬱で仕方なくて、靴を履くだけでテンションが下がるそうです(笑)。
ちなみに司会の久路あかりさんから「相手役の和音さんがとても上手だそうですが」と話を振られた井上さん、「僕は前の舞台があったので、スタートが遅かったんです。僕も同じ時からスタートしていれば同じくらい伸びてたんじゃないかなって気がしてるんですが!」と主張していました。
なお、げきぴあでは話題のアイススケートシーンの練習、後日レポートいたします。お楽しみに!
その後、『エリザベート』のルドルフ3名が登場!ルドルフ4名が揃って、まずは『エリザベート』ルドルフ役のオーディションの話に花が咲きます。
井上さんは、オーディション後何日かして、演出の小池修一郎さんから留守電が入っていたけれどそれが何を言っているのかわからなかった、そうです。
オーディションは「めちゃくちゃ緊張した」という大野さんは、受かったと知って「あの憧れの軍服が着れると思って嬉しかった」、平方さんは受かったと教えられて「叫びました。その瞬間は嬉しかったけど、すぐに怖さやプレッシャーがきた」、古川さんは「嬉しかったけど、とにかく不安でした。不安しかなかった」。その反応を訊いて「三者三様ですねー」と井上さん。
そして井上さんの初演時のルドルフ扮装パネルが登場するサプライズもあり...。
平方さんが「僕、すごい汗かきなんですけど、稽古場で暑い暑い言っていたら「芳雄さんよりは大丈夫だよ」って言われました(笑)」と言えば、
井上さんが「僕は泉見洋平さんよりは大丈夫だよって言われました(笑)。泉見さんは石井一孝さんよりは大丈夫だよって(言われたそうです)」と、ミュージカル界の汗かきピラミッド?を披露。
また、現在のルドルフ3名は
「僕ら、長男(平方さん)、次男(古川さん)、三男(大野さん)って言われてるんですが、長男はやっぱりしっかりしていて几帳面なんですね。雄大さんは、若干、整理整頓ができない子なんです。だから雄大さんが片付けていないのを、元基さんがかたしてあげてる(笑)」と大野さんがバラし、
「この話、僕、なんのメリットないよね」と慌てる古川さんに、
平方さんが「(楽屋の机が)机なのかなんなのかわからないじゃん、すごいよね!」と畳み掛ける...というような微笑ましい(?)エピソードも。
井上先輩への質問コーナーでは、大野さんがまず「ミュージカルの第一線で活躍している芳雄先輩に...」と言ったところで井上さん、「すごい、後輩ってこんなに持ち上げてくれるもの? (そういう後輩は)浦井健治だけかと思ったんですが!今の若い人はすごい!!」と大喜び。
で、質問内容は「普段の生活でミュージカル俳優として気を付けていること」です。
井上さんの答えは「僕は喉にネギを巻く、的なことはしてない方です(笑)。毎日飲みますし、今の若い人は喉を気をつけてお酒を飲まない人が多いですが、僕は飲むミュージカル俳優の最後の世代。筋トレもしないし...。本番をやりながら、"この役はこういう筋肉がいるんだな"とか学んでいる感じですね。声帯にはストレスをためないのが一番いいと思うんですが、でも失敗はあるし、さっきまで声が出たのに出ない、とかもある。声が出なくて一番つらいのは自分だから、自分を守ってあげるしかないんだけど、守り方も人それぞれですね。あとは終わったことは気にしない!」とのアドバイスでした。
続いて平方さんからは「僕は井上さんと同じ福岡出身なんですが、今度初めて博多座に行って、自分の地元でお芝居するんです。知り合いもいっぱい来てくれますし、遊びにもいっちゃうし、季節もいいし、そこで気をつけなきゃいけないことは」という質問。
井上先輩の答えは「まさにいま仰ったこと全部気を付けた方がいいね~。友達が見にくるじゃない。僕もありとあらゆる友だち・親戚が来て、毎日だいたいそのまま飲みにいっちゃって。ルドルフは最後、トートダンサーにリフトされて死ぬんですが、最後の方にトートダンサーが小さい声で「重い、芳雄重い!」って言うくらい太っちゃって」という教訓が語られました...。
最後、古川さんからの質問は「9月まで公演があるのですが、ロングラン公演のアドバイスを」。
こちらの井上先輩の答えは「精神的にけっこうやられます。3・4ヶ月超えると。しかも地方で、自分の生活基盤から離れた場所で数ヵ月とかいると、あれ? 俺の家賃むだじゃね? とか(笑)。僕、最初地方公演いったとき、東京に帰ったらガスが止まってましたから。それだけじゃなく、舞台でも新鮮さを保つというのはすごく難しいことで、いい意味でも悪い意味でも慣れてきちゃうので。自分でも何やってるんだっけ?となっちゃう時期がきます。あとカンパニーがぎくしゃくしたり。みんなと毎日いて、すごく楽しいけれど、一回「もわっ」てするんですよ。それは必ず来るの。それを...心強く乗り切る! 乗り切る方法はまったくわかりません(笑)。でもそこを乗り切ったらまた素敵な景色が見えるときがくると思います」と、ちょっといい話でした。
最後に大野さんが「毎回、本当にお客さまのパワーが力になって、出待ちしてくださる方の叱咤激励の言葉とかでここまで走ってこれたと思います。一回一回確実に成長できるように、一回も一秒たりとも気を抜かずに頑張って行きたいので最後までよろしくお願いします」、平方さんが「僕も、帝国劇場でいっぱいパワーをたくわえて、博多名古屋大阪と走り抜けたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします」、古川さんが「これから地方に向かいますが、もっともっとルドルフについて掘り下げて、どんどん近づけていけたらと思います」
とそれぞれご挨拶。
そして井上さんが「今のルドルフ3人とちゃんと初めて話が出来てうれしかったです。みんな背も高いし、そのスタイルをもってしかも一生懸命って素晴らしい。本当にに必死に『エリザベート』という作品のルドルフをやっているんだなと思って、嬉しいです。その勢いそのままで地方公演に行ってほしい。僕たちも再演とはいえほとんど新作のような『ルドルフ』という新しい作品を作っています。デビット・ルヴォーという素晴らしい演出家のもと、僕のミュージカル観が全部かわるような衝撃的な稽古をやっているので、皆さんが今まで見たことがあるミュージカルとは全然違うミュージカルが来月、この帝劇の舞台の上にのっかっていると思います。今は『エリザベート』を通してのルドルフ、来月はルドルフが前面にでた僕たちの『ルドルフ』で、ルドルフという興味深い人について一緒に体験しにきていただければ嬉しいです」とまとめて、イベントは終了しました。
『ルドルフ ザ・ラスト・キス』公演は7月5日(木)から29日(日)まで、東京・帝国劇場にて行われます。
チケットはチケットぴあにて発売中です!
『エリザベート』東京公演はまもなく6月27日(水)に千秋楽。
その後は7月5日(木)から26日(木)に福岡・博多座、
8月3日(金)から26日(日)に愛知・中日劇場、
9月1日(土)から28日(金)に大阪・梅田芸術劇場 メインホールで上演されます。