『ミス・サイゴン』製作発表こぼれ話

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●ヒラノの演劇徒然草●

今年、日本初演から20周年を迎えるミュージカル『ミス・サイゴン』
「究極の愛」をテーマにした内容ももちろん、
舞台上にヘリコプターが登場したりキャデラックが登場したり、壮大なスケールで展開するその舞台も話題だったこの作品ですが、その大掛かりな舞台機構ゆえに、今までに帝国劇場、博多座の2か所でしか上演できませんでした。

その作品が、舞台装置、衣裳、照明等すべてのセクションを一新、「新演出版」として蘇ります。
そして映像も駆使したこの「新演出版」は、全国各地の会場での上演も可能になりました!

ということで2012年、20周年目の『ミス・サイゴン』は全国11都市での縦断公演になります。
この全国縦断公演の製作発表が4月9日、公演のスタート地であるめぐろパーシモンホールで行われました。
その模様はひと足先にニュースでお知らせしましたが、そこに掲載しきれなかったこぼれ話を「げきぴあ」でお伝えいたします!
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まずは日本初演時から出演しているミスター『ミス・サイゴン』、市村正親。

「初演の20年前は6か月間はひとりで乗り切った」という市村さん。演じるエンジニアという役はフランス系ベトナム人で、混乱の時代を利用してアメリカン・ドリームを掴もうとしたたかに生きる、しかしどこか悲哀もある役どころ。
この役については「僕が劇団をやめて掴んだ役がエンジニア。それが1年半のロングランをして、その後の僕の演劇人生の大きな道しるべとなりました。エンジニアの"アメリカン・ドリーム"は自分ともダブります」と感慨深げでした。
また人生を重ねたことで、「初演の時演じたのは、絶対アメリカに渡れるであろうエンジニアでした。今回はもしかしたら途中でおぼれるんじゃないかなというエンジニア、そういう人間の哀しみというか切なさを演じたい」と今回の再演にあたっての意気込みも。

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ヒロイン・キムは笹本玲奈、知念里奈、新妻聖子のトリプルキャスト。皆さん2004年の再演時から出演されています。

「今まで積み上げたものももちろん大切にしながら、今回は新しい演出ということで、またゼロから生きられたら」と笹本さん。

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知念さんは「新演出版を観ましたが、また違う角度から『ミス・サイゴン』という作品を素敵に表現されていたので、自分がどんなふうにピースのひとつとなって表現できるかなと楽しみにしています」。
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新妻さんは「新演出ということで新作に挑むような気持ちでおります」とご挨拶。新妻さんは新演出版をすでに4回観ているそうで、「2005年の冬にイギリスで観たときは、まだ新しい演出が楽曲・脚本になじんでいない印象だったのですが、4年後に韓国で観たらまったく別物になっていて驚きました。本と音楽に新しい演出がどんどんなじんできたんだなってことを感じましたし、演じるキャストの心で作品が別物になるんだなと驚きました。日本の心強い仲間と一緒であれば、また日本にしかない『ミス・サイゴン』が生まれると確信しています」と話していました。
ちなみに韓国版は知念さんと新妻さん、一緒に観にいったそうです。
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キムと恋におちるアメリカ兵、クリスは山崎育三郎と原田優一。
原田さんは2008年に引き続きの出演、山崎さんは初参加です。

「初めて衣裳を着た時に鏡に映った自分がベトナム兵にしかみえなかったので(笑)、まず鍛えて、マッチョになって登場したいと思います」と山崎さん。
その後の囲み取材でも「腕立て伏せを毎日100回はやろうと思ってます。もう胸筋がけっこういいかんじなんです。あと短髪にして男らしいかんじで、マッチョマンでいきたいと思います!」と意気込んでいました。

原田さんもソウルで新演出版を観ているそうで、「やっぱり韓国だと軍隊に入られてる男性が多いので、アーミー服が似合うんですよね...」という感想を。そしてコンピューターのオートメーション制御だったオリジナル演出版と比較し、手で動かす部分が多かったという違いを上げ、「いままでのバージョンは人間が無常に時代に流されていく、まわりの環境が人間より先に動いていってしまうというのがすごく表現できてるなと思ったんですが、新演出は人間が発するパワーというものが出ている」とその印象を語っていました。
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クリスの戦友ジョンは、2004年版から出演している岡幸二郎と、今回初参加の上原理生。レミゼのアンジョルラスコンビ。
ジョンが歌う2幕冒頭の「ブイ・ドイ」も素晴らしいビッグ・ナンバーです。

岡さんは「自分自身も新演出を楽しみにしています。私はベトナムに行って、実際ジョンのような活動(アメリカ兵がベトナムに残してきた子供〈ブイ・ドイ〉への支援活動)をする方にお会いしたことがあります。まだ現実に続いている作品なので、重く受け止めながらメッセージを伝えたい」と真面目にご挨拶。

上原さんは「ジョン役を支えてこられた先輩と一緒にやらせていただくので、胸をお借りするつもりでたくさん勉強させていただきたいなと...」と言ったところで岡さんから「そう簡単には貸せないですね!」(笑)。
ちなみに囲み取材の場で、この発言について岡さんは「彼ならできる!(から貸さない)」と言って、上原さんは「またハードルを上げられた...」と苦笑していました。
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クリスの妻、エレン役は元劇団四季の木村花代。
「大好きな作品のひとつなので、大好きな出演者の方々と尊敬する大先輩の中で足をひっぱらないように精一杯エレンを全身全霊で生きていけたら」とご挨拶。
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キムの婚約者トゥイ役は泉見洋平。
「今回新演出ということで、どんな化学反応がおこるのかなっていうのがすごく僕自身も楽しみですが、ただ、愛するキムに毎回殺されるっていうのが...(苦笑)。お手柔らかにお願いいたします」。
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ジジ役は池谷祐子。2008年に続いての出演ですが「この役はわたしにとってプロとしてミュージカルの舞台に立つはじめての作品だったので、思い入れがすごくある。またこうしてめぐり会えたことは奇跡で、とても嬉しく光栄です」とご挨拶。
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一般のお客さまも参加したこの日の会見では、劇中歌の披露もありました。
「世界が終わる夜のように」
120409saigon14.JPG120409saigon15.JPG「今も信じてるわ」
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「モーニング・オブ・ドラゴン」
120409saigon17.JPG「ブイ・ドイ」
120409saigon18.JPG「命をあげよう」120409saigon19.JPG

また会見後の囲み取材はこんなかんじでした。
まず前半はエンジニアとキム。
「20周年目にまた『ミス・サイゴン』がやれるというのは感極まるかんじ」と市村さん。
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笹本さんは「3回目の挑戦ですが、2004年にはじめてキムをやったときはまだちょっと幼なかった。2008年もちょっと大人になってきたかなくらい、ようやく今回、母親の気持ちに近づける年齢になって演じることができるので楽しみ」。

知念さんも「出産する前と、した後と、今回は息子が小学生」というタイミングでのキム役で、「時間を重ねてどういうキムができるのか楽しみ」と話していました。

新妻さんは「私の感想ですが、オリジナル版と新演出は別物なんです。新作を創り上げるつもりで挑もうと思っています。『ミス・サイゴン』という音楽、脚本の20年という重みは感じつつ」と話していました。
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後半のみなさんはこんなメンバーです。
120409saigon22.JPG120409saigon23.JPG120409saigon24.JPG上原さんは「初めて劇中で死なない役をやらせていただきます」。
木村さんも「初めて妻の役を演じます」。
泉見さんは「僕は死ぬんですよ、毎回...。何回殺されるのか数えると恐ろしい...」と苦笑。でも「毎回やっていて心が苦しくなる。それだけこの作品がもっているメッセージが大きいということ」と話し、
岡さんが「すべてが何かに対する愛でこの話がまとまっている。(キムやクリスだけでなく)トゥイだったら祖国に対する愛、キムに対する愛。ジョンだったらアメリカに対する愛。愛って普遍的なものだと思うので、それが最大の作品の魅力になっている。あとは音楽の良さですね」とまとめていました。

公演は7月1日(日)東京・めぐろパーシモンホール 大ホールを皮切りに、8月22日(水)から9月9日(日)の東京・青山劇場ほか、広島、愛知、山梨、神奈川、宮城、福岡、静岡、大阪、熊本、長野、岩手の各地で行われます。チケットは順次発売。

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