『ヴィラ･グランデ青山 ～返り討ちの日曜日～』 vol.6～稽古場レポート2～

現実と非現実の境目があいまいになるような独特な世界を持つ倉持戯曲。
例えて言えば、うっすらモヤがかかったようなあいまいな色合い。
そんなイメージを持って稽古場に伺ったのですが...。
さすがにこのインパクトある俳優陣、強烈な個性です、ビビッドです。はっきりくっきりしています(笑)。

竹中さん扮する民谷史章は広告デザイナー。
舞台となるマンション「ヴィラ･グランデ青山」の住人です。
このマンションの管理人が、田口浩正さん演じる岡根三知男。
まず伺った時点では、このふたりのやり取りを何度も繰り返しお稽古していました。

竹中さんは、竹中さんらしいあの独特のよく響く口調と大きなリアクションで、普通のセリフ・間合いでもなんだか面白いのですが。
田口さんの間合いも面白い。竹中さんとのコンビ、絶妙です。
民谷のギャグに岡根が舌打ちする場面では、何度繰り返しても、そのたびに笑いが起きていました。

これは民谷と岡根がとあることをして「やべっ」となるシーン。
倉持さんは、「大げさに振り返るようにしたい」と、このふたりの体の角度なども細かく演出。
といっても、本作では倉持さん、俳優さんに委ねている部分も多そうに感じました。

時間にして5分くらいの短いこのシーンを何度も繰り返し稽古したあと、小休憩。
この休憩時間中も、竹中さんはひとりで自主練習...。

休憩後、三幕の大半を通しで。
こちらは民谷の娘、蓮役の谷村美月さん。
民谷と蓮の微妙な父娘関係、谷村さんはナチュラルに演じます。
この物語、チラシにあるように、蓮の元カレが民谷に切りかかった、というのが発端。
その事件は大きな存在としてありつつ、問題点は別次元にあることが、少しずつわかっていきます...。


こちらは日野康也役の松下洸平さん。
日野は、蓮の元カレの友人、という役どころです。と書くと、ちょっと人間関係的に遠く感じますが、なかなかのキーパーソン。
ここでの倉持演出は、「驚きのインパクト」が主眼。
駆け込んでくる康也に民谷と岡根が驚く、そのタイミングを何度も調整します。
康也がドアを開けた瞬間なのか、彼が走ってくる姿を見てなのか、それとも彼が声を発したことに驚くのか。
また、「驚いた」ことが明確に分かるようにと、民谷の立ち居地も微妙に変えていきます。
倉持さんの演出を見ていると、本当に些細な、ちょっとした変更なのに、見え方・感じ方がくっきりと変わるのに感動します...。

山田優さんは、マンションの住人・早坂津弓役。
これが初舞台の山田さん、どうやら気負いなくお稽古に臨んでいるようです。
他の出演者の芝居を観てコロコロ笑ったりする姿も素敵です。
そして、さすがに目を引く立ち姿！


その、山田さん扮する津弓の部屋の大家さんが、生瀬さん演じる陣野圭作。
陣野はかつてこの「ヴィラ・グランデ青山」に住んでいたがある事情から引っ越して、部屋を貸し出している、という経緯です。
陣野が、民谷に「アンタね...」と話しかけるところなんか、なんだか"素"の生瀬さんと竹中さんに被るようで...。

そんなこんなで、「たぶん"アテ書き"なんだろうなあ」という、俳優さん自身の魅力が活かされる部分がありつつ、そのキャラクターたちが、次第に、"現実と非現実の境目があいまいになるような"倉持ワールドに巻き込まれていく展開になりそうです！

公演は11月11日(金)から27日(日)まで東京・シアタークリエ、12月1日(木)から4日(日)に大阪・サンケイホールブリーゼ、その他各地でも上演。
チケットは発売中です。