【演劇ニュース】
井上芳雄と上原多香子が主演するミュージカル『ウェディング・シンガー』が、東京・シアタークリエにて3月6日に開幕した。前日の5日には公開舞台稽古が行われ、井上と上原が取材にも応じた。
物語は、結婚式を盛り上げる"ウェディング・シンガー"であるロビー(井上)と、式場のウェイトレス・ジュリア(上原)が主人公。数々の結婚式を祝福してきたロビーだが、自身は結婚式当日に花嫁に逃げられてしまう。一方同僚のジュリアは付き合っているエリート彼氏からのプロポーズを待っている。それぞれ相手がいたはずのふたりがお互いの相談に乗っているうちに、自分の本当の気持ちに気付くのだが......。
同名のアメリカ映画を元に、2006年にブロードウェイで初演されたミュージカル。日本では2008年に初演、今回は初演キャストが勢ぞろいしての待望の再演となる。ストーリーの軸はロビーとジュリアの恋だが、そこから伸びる枝葉が爆笑要素のオンパレードで痛快だ。ロビーのバンド仲間、サミーに扮する鈴木綜馬のダサさ、ジョージの新納慎也のオカマっぷり。ロビーの祖母役の初風諄が美しい声で下品な言葉を連発すれば、ジュリアの恋人・グレンの大澄賢也が得意気に肩からぶら下げるカバンサイズの携帯電話からはレトロ感が漂う。微妙なチープさを一流のコメディに変える絶妙の構成と、キャスト一同が全身で楽しんでいる空気が客席に伝わり、とても楽しい作品に仕上がった。全体的に80年代アメリカ文化へのオマージュにもなっているので、ところどころに挿入されるあのアーティスト、あの作品のパロディを笑うのも楽しみのひとつ。中でも一幕最後、樹里咲穂演じるホリーを中心にした某映画のパロディ・シーンは圧巻だ。
ミュージカル『ウェディング・シンガー』開幕