M&Oplays+PPPPプロデュース『窓』 vol.04  from 倉持裕

本多劇場に入る。

かつての「劇場すごろく」はもう流行らないのかもしれないが、
それでもやはり目指す価値のある劇場だと去年初めて使用して思った。
ここで芝居が打てることは光栄だ。
もしもこれからここで何度も打つことになったとしても、きっと毎回そう思えると思う。

さて、「窓」の出演者紹介を続ける。

河原雅彦さん。

これまで河原さんには、僕の書いた本を何度も演出してもらっているし、
パルコでやった「解放弦」という芝居(僕が書いてG2さんが演出した)に出演して頂いたこともあって、
つまりとても縁の深い方なんだけど、
僕が作・演出する舞台に、俳優としてお招きするのはこれが初めて。

稽古前半、河原さんは「真心一座 身も心も」の本番中だったため、
他の出演者より遅れての参加となった。
その、河原さんが本格的に稽古に参加した初日、いやもしかしたらその次の日も、
僕はやけに緊張してしまったのを覚えている。

僕の目にはどうしたって、河原さんが役者ではなく演出家にしか見えなかったからだ。
いや、ご本人は演出家としての態度は微塵も見せない。
出番のない時は他の役者同様、黙って自分の席から稽古を眺めているだけだ。
なのに僕の中から消えていかないプレッシャー......。

今の日本の演劇界で、演出家としての河原さんは、その人気も実力も相当なものである。

何度もご一緒したから言うわけではない。
特にこの2、3年、
切れ目なく、しかも実にバラエティに富んだジャンルの作品を手掛けながら、
あの"打率"は驚異的だ。
とにかくハズさない。

たとえどんなにとんがった本だろうと、
コアな演劇ファン限定の自己満足な芝居にせず、
ベースにしっかりポップさが確保された間口の広い作品に仕上げてくる。

反対に、始めから万人受けがある程度予想されるウェルメイドな本の場合、
河原さんが日頃嗜好するダークな、禍々しい色がそこかしこに配され、
結果、毒にも薬にもならない芝居に堕することを回避する。

どこへ向かおうと演劇が「見せ物」であることを忘れない、
今、もっともセンスのある演出家だと思う。

......とまあそんな風にかなりリスペクトしてるもんだから、
稽古場での僕の嫌な汗も推して知るべしで、
その最初の二日間ぐらいは(今だから言えるが)キャスティングしたことを少し後悔したぐらいだった。

しかしそんな僕の中の「演出家・河原雅彦」はすぐに消えた。

今回、河原さんの演じる是松悦治(コレマツエツジ)という役は、
純粋悪とでも呼ぼうか、さしたる根拠もなく悪意をばらまく狂気の人だ。

それを河原さんは、最初の本読みの後に、
「これならやりやすい」と呟いたとおり、
まさに有言実行、ためらうことなく、実に活き活きと演じてみせてくれた。

前身、ハイレグジーザスを持ち出すまでもなく、
河原さんという人は、たとえば一般常識やら既成概念といった、
世間に広く認知されている、実体なき"ぼんやりとした安全"に対して、
常にアンチの立場を取っているように見える。

もちろん、そんな主義についてご本人の口から聞いたことは一度もない。
むしろ嫌いなものについてはほとんど触れず、
話すことといったら、ホラー映画や怪獣のフィギュアや下ネタなど、
自分の大好きな事柄についてばっかりだ。
だから常に嬉しそうな笑顔。

でも......、でも、だ。
僕の目には、その裏に怒りやら冷笑やらがちらついてならない。
それが錯覚だと言うのなら、
あの是松悦治のリアリティの説明が難しくなる。
あれは、毎日好きなもののことしか考えない善人に出来る芝居じゃない。

そんな風にして、僕はすぐに、
俳優としての河原さんについてあれこれ考えるようになったわけである。

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