●ヒラノの演劇徒然草●
ニュースでもお伝えしましたが、先週8月18日、ミュージカル『モーツァルト!』の製作発表が行われました。
げきぴあでは今回も、ニュースに書ききれなかったこぼれ話をお届けいたします!
今年、M・クンツェ(脚本・作詞)&S・リーヴァイ(音楽)コンビの作品を3作品、7か月にわたって上演する帝国劇場。
4・5月の『レベッカ』、現在公演中の『エリザベート』に続き、この企画の締めを飾るのが『モーツァルト!』です。
日本初演は2002年。
『エリザベート』で一気に日本のミュージカルファンの心を掴んだクンツェ&リーヴァイ、その人気を不動のものとさせたのが、日本上陸第2作目となった本作です。
モーツァルトの生涯を描く内容ですが、斬新なのは、生身の人間"ヴォルフガング"と、才能の化身である"アマデ"を同時に舞台に登場させて、天才音楽家の葛藤や苦悩を2面から紡ぎだす手法。
そして、モーツァルトの楽曲はほとんど使用せず、S・リーヴァイによる多彩かつ美麗な音楽で全編彩られていること。
さらに、穴あきジーンズなど現代的な服と、18世紀ヨーロッパらしいデコラティブな服が共存する衣裳なども印象的です。
その日本版初演から、主役・ヴォルフガングを演じているのが井上芳雄。今回で4度目のヴォルフガングです。
今年でデビュー10周年という彼は
「初演の時にはただただ必死で、自分にはちょっと重荷が大きすぎる役なんじゃないかと思ってやっていたけれど、僕も31歳になって......。モーツァルトが死んだ歳って32......?」
と演出の小池修一郎さんへ。
「...5? 35(歳)でした。あまり近くなかったです。近いって話をしようと思ったんですけど(笑)」
と苦笑する井上さん。
「でも少しずつ30代半ばに近づいて、(初演の)23・4歳の頃より経験も増えています。さらに今回は育三郎君という新しいヴォルフガングを迎えて、また色々な刺激を受けて、今までとは違うものになると思います」と力強くアピールしていました。
そして今回から新しくヴォルフガング役にキャスティングされた山崎育三郎。
『レ・ミゼラブル』のマリウス役などが印象深い俳優さんです。
井上さんの『エリザベート』ルドルフ皇太子でのデビューの鮮烈さはすでに語り草ですが、
山崎さんのデビューも衝撃でした。
私が初めて彼を観たのは、そのデビュー作『レ・ミゼラブル』(2007年)の記者会見でしたが、その会見で劇中ナンバーを披露した山崎さんのあまりの上手さに、ちょっと周りの記者たちがざわつきましたからね。
さてその山崎さん。
2002年の初演時、高校生の時にこの作品を観て感動、いつかモーツァルトをやりたいという思いで今日までやってきた、と思い入れを語ります。
「作品を観たあとに楽譜とCDを買って、毎日『モーツァルト!』の楽曲をきいていました」とのこと。
ふたりのヴォルフガングの熱弁を受けて、初演から出演し続けている、ミュージカル界の二大巨頭はそれぞれ次のようにコメント。
「いま、山崎育三郎さんの隣にいて、なんとなく字面も似ているし、父兄参観日のような気分になってしまいました(笑)。こんなエネルギーに溢れている人たちがさらに頑張ると言うのだから、自分はエネルギーが溢れるほどはないけれど(笑)、頑張んなきゃ」(山口祐一郎/コロレド大司教役)
「芳雄が31歳になったときいて、ショックと喜びと、いろんなことを思っております(笑)。育三郎君とは、『ラ・カージュ・オ・フォール』で僕は継母役でしたが、今回は父親役。どういう風な父子関係が作れるのか今から非常に楽しみ」(市村正親/モーツァルトの父・レオポルド役)
モーツァルトの妻・コンスタンツェには前回公演に引き続き島袋寛子。
前回・2007年公演がミュージカル初挑戦だった彼女は「前回は右も左もわからなくて、すごく緊張したまま最後までいった。今回はもう少し落ち着いてコンスタンツェという役を深めて追及できれば」と意気込みを。
また、この日の会見で一番沸いたのは、記者から出た「この不況の中、ミュージカルのチケットを2枚買うのは難しい。そこで"自分のヴォルフガングに観にきてくれたらこれがある"という点をアピールしてください」という質問。
「自分のアピール......言い出したらとまらなくなると思うんですけど(笑)」と軽口を飛ばしながら、井上さんは「肌のハリとか、若さはかなわないと思うので、いぶし銀の魅力を。あとは...身長も同じくらいだもんね...。足の長さはちょっと僕の方が長いんじゃないか......と今、育三郎君のマネージャーさんが言ってくださったので(笑)、そこを見ていただければ!」
対して、さきほどこの役への憧れを語った山崎さんは「僕はもともと客席で観ていた側でしたので、その"夢がかなう瞬間"というのを見ていただきたいなと思います」。
この手の質問は、相手に遠慮してかあたりさわりのない答えになることが多いのですが、ふたりとも気のきいたことを言うなあ、とメモを取りながら感心する私でした。
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