●よこやまのステージ千一夜●
今週月曜に立川談春 独演会「アナザーワールド Ⅲ」に行ってきました。
毎月3日間、半年にわたって成城ホールで行われるこの「アナザーワールド」シリーズは、談春ファンでもなじみの薄い演目(時にネタおろし)を取り上げ、古典落語を2席たっぷりと聞く会です。人気噺家のなかでも特にチケットが取りづらい談春さんの会ですから、チケットを死守できた人は「入場を許された勝利者」と言っても過言ではないのですが、なぜか成城学園前から小走りで成城ホール側へ向かう人のほとんどが談春ファン(そして自分も早歩き)。妙に気がせいている人ばかりです。会場に入ると、私の右も左もその前も「がっつりメモを取るぞ!」とばかりにメモ帳とペンを用意しているおじ様方。筋金入りの談春ファンに囲まれてます。
今日の演目は......
「野ざらし」と、この会の初ネタおろしとなる「猫定」。
まずは「野ざらし」
隣の隠居に女の幽霊の話を聞いた独り者の八っつぁんが、若い女より年増の女がいいと、釣り嫌いなのに向島に行って騒動を巻き起こす。最後の八五郎による妄想猛々しいひとり語りが楽しい「野ざらし」を、談春さん、熱演で締めくくっていました。
で、仲入り。
携帯をチェックし、ついったーなぞを覗いてみると、同時刻に新橋演舞場で行われている「楽太郎改め六代目三遊亭円楽襲名披露公演」のツイートに驚愕の文字が。
「口上で、家元登場!!! 新橋演舞場、大盛り上がり」
「本来、志の輔が座るべき席に、談志が座っている!! 円楽を挟んで左が歌さん、右に家元。会場どよめく」
などなど。
不調が伝えられており、最近4月に復帰との報せが届いた立川談志の思いもよらぬ登場に、ツイートの文字も躍ってます。すごいな、ついったー。瞬時に別会場の状況もわかってしまう。「家元情報は私だけが知っている」とニヤニヤしながら休憩後席に着くと、仲入り後の枕で談春さんがあっさりと「あ、家元情報なんですがね...」と私がツイートで見たまんまの話を観客に。ああ......。
ネタおろしの「猫定」。
猫塚の由来となった、主人の仇討をする忠義な猫の話。主人の居ぬ間に間男を連れ込み、挙句の果てに主人をふたりで殺そうと企てる女房をじっと見ていた猫が、この妻と間男を噛み殺すシーンのサスペンスフルな部分と、殺された主人と女房が棺おけから出てきて弔問に訪れた盲人のあんまを睨み付けるが、睨まれるほうはわれ関せずという喜劇的な部分の落差が面白い。すぐにでも談春さんのレパートリーになりそうな出来栄えに、私はもとより、メモを取り続ける筋金入りのファンの皆さんも拍手喝采でした。
チケットは5月分が4月23日(金)より発売です。