2023年6月アーカイブ
この若さで、こんなに馬力のある役者がいるんだな。未来は明るい。――朴璐美は舞台『キングダム』で牧島 輝と共演し、そう感じたという。また『キングダム』の脚本も手がけた藤沢文翁と共に山路和弘主体の芝居を創ることを考えるなかで、複数の案の中から最終的に"晩年の宮本武蔵"が題材となった。
朴 宮本武蔵は、剣豪であり、水墨画や書物にも秀でた添付の才を持ち合わせた人。しかし運に見放されていたがゆえに、実はその時代に名を馳せることができなかった。しかも資料を調べてみると、生年、名前、実績と、はっきりしないことが多すぎる。なのに今現時代の我々が剣豪宮本武蔵の名を知っているのはなぜなのか。老いた宮本武蔵とその弟子である養子の伊織を通して人間 宮本武蔵を描いてみたいという藤沢さんとの話から再発起しました。
山路 宮本武蔵なんて自分から一番程遠いし、最初は拒否していたんですけど。吉川英治さんの(小説で描かれた、現在では一般的な)イメージじゃない武蔵を描くとどんな芝居になるのか、想像がつかなかった。だったらやってみてもいいのかな、なんて思って。
―伊織役に、藤沢は牧島を希望。朴もそれには同意しながらも、スケジュール的に無理だろうと思いつつ打診したところ、牧島は快諾。山路と牧島の初共演が決定した。
牧島 (取材は稽古2日目)まだ1回目の本読みですけど、山路さんを見ていると背景が見えてくる瞬間があるし、武蔵と山路さんの生き様がにじみ出ている。すごいことだと思いますし、圧も感じました。
山路 武蔵はある意味、剛球一直線で、基本的な方向性は決まっている。でも伊織はいろいろなことを考えながら武蔵に接しているし、屈折もしている。そこが大変だなと思う。
牧島 今の時代の親子とは相当かけ離れていますよね。どこまで言っていいものか、踏み込んでいいものか、精神的にも物理的にも、ある意味本当に命がけで......と、いろいろ考えながら読んでいました。武蔵はもちろん、伊織も常に戦っていて、すごく信念が強い。自分の目で見ながら感じたことを伝えていきたいと思います。
山路 そういう伊織と牧島くんが重なる部分は多い。理解が早くて、役者としてすごく頭が良いんだろうしね。まだ若いし、魅力的であればあるほど嫉妬もするし、若い芽のうちに摘み取りたいという気持ちが湧き上がってくる(笑)。
朴 これはすごいせめぎ合いが生まれそう。面白いな!
―また、切り絵作家・下村優介とのコラボレーションによるビジュアルも強い印象を残す。
朴 武蔵には、影絵や切り絵の"白・黒"っていうイメージがあったんです。それで、もともと作品が好きでツイッターをフォローしていた下村さんにダメ元で連絡をしてみたんですよ。武蔵の、己の剣に、生と死のはざまにこそ真がある、っていう思いと下村さんの作品はリンクする。直感的に思ったことが叶った後に必然を感じるビジュアル創りでした。
牧島 撮影の時、刀が少しでも引っかかったら壊してしまいそうで怖かったですね。でも本当に羽ばたいているように見えるし、同じような形でもまったく同じものはひとつもないし、儚くて繊細で、すごく綺麗でした。
山路 そんな作品を「どうぞ使ってください」って言ってくれるなんて、本当にすごい。作品の中に入って撮影するなんて、そうそうない経験でしたね。
―これから稽古を通して、ふたりはどのように役柄を、芝居を深めていこうと考えているのだろう。
山路 まだ、頭の中でいろいろ繋がっていないんですよね。この辺にこう出てくるのかな、っていうのは感じるけど、そういう読みってだいたい外れますしね。"罠"がいっぱいある感じで、取り組み甲斐のある脚本ですよ。
牧島 最初に言葉を発した時に感じたことをそのまま深めていくのか、これは違ったと思って変えていくのか。深掘りしながら楽しんでいきたいですね。
朴 ふたりはやっていて苦しいでしょうけど、同時に楽しいでしょうね。脚本の藤沢さんが今思っていること、伝えたいこと、山路を見て牧島くんを見て思ったことがこの脚本に落とし込まれているし、"生きる"ことがテーマだと思います。そこを掘り下げていきたい。
山路 僕の芝居をいつも見にきてくれる人たちは、悪あがきしたり苦しんだりしながら演じているところを観に来ているような気がする。今回の『剣聖』ほどジタバタする舞台は、なかなかないんじゃないかな。
牧島 僕のファンに限らず、演劇が好きで劇場に足を運んでくださる人は、そこに居合わせて何かを目撃したいんじゃないでしょうか。この作品は"まさにそれ"っていう感じ。とても疲れるでしょうけど、すごく見ごたえのある作品だと思います。
朴 それは間違いない。だって、大舞台であれだけのものを放出できる二人が、サンモールスタジオというコンパクトな舞台で濃密な芝居を見せるわけですよ。これは震えますよね。
―ふたりのエナジーに圧倒されるに違いない舞台は、6月30日より。
劇作家・演出家ケラリーノ・サンドロヴィッチと女優の緒川たまきのユニット「ケムリ研究室」。挑戦しつづける彼らの第3弾新作公演のタイトルが決定した。
タイトルは『眠くなっちゃった』。近未来を舞台にした大人のための寓話になるという。緒川たまきをはじめ、北村有起哉、音尾琢真、奈緒、水野美紀、篠井英介、木野花、他力強いキャスト陣が創り上げる舞台、様々な想像を巡らせながら10月を待ちたい。
東京公演は世田谷パブリックシアターにて10月1日(日)から10月15日(日)上演、公演日程詳細も解禁された。さらに北九州、兵庫、新潟公演の日程も解禁。
詳細は(キューブ https://www.cubeinc.co.jp/archives/8767 )にて確認して欲しい。
東京公演のチケット一般発売は8月5日(土)。各プレイガイドの先行を予定している。
上演を待ちきれないという声に応えるべく『眠くなっちゃった』への期待をより高めるイベントも準備されている。ケムリ研究室の二人が主催し、前作『砂の女』に出演した武谷公雄も参加す
るイベント「ケムリ研究室・研究見学会2023~新作のためのキーワード「未来・喪失・革命」をなんとなく巡ってのリーディング&トーク~」が、7月7日、8日に渋谷 LOFT HEAVENにて開催予定。ケムリ研究室の発想の"ラボ"を覗いてみる貴重な機会だ。
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ケムリ研究室no.3
「眠くなっちゃった」
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:
緒川たまき 北村有起哉 音尾琢真 奈緒 水野美紀
近藤公園 松永玲子 福田転球 平田敦子 永田崇人
小野寺修二 斉藤悠 藤田桃子 依田朋子/
山内圭哉 野間口徹 犬山イヌコ 篠井英介 木野花
【東京公演】
2023年10月1日(日)〜10月15日(日) 世田谷パブリックシアター
<料金> (前売・当日共/全席指定/税込)
チケット料金:S席(1・2階席):12,800円
A席(3階席):8,800円
U-25チケット ★ :6,000円(チケットぴあ前売のみ取扱)
★当日の開場時間から受付にて身分証明書提示の上、指定席券と引き換えます。座席はお選びいただけません。予め
ご了承くださいませ。
東京公演チケット一般発売:2023年8月5日(土)
【北九州公演】
10月20日(金)〜10月22日(日)J:COM北九州芸術劇場
お問合せ:J:COM北九州芸術劇場 093-562-2655(10:00~18:00)
【兵庫公演】
10月26日(木)〜10月29日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
お問合せ:芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00〜17:00/月曜休み※祝日の
場合翌日)
【新潟公演】
11月4日(土)〜11月5日(日)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場
お問合せ:りゅーとぴあチケット専用ダイヤル 025-224-5521(11:00~19:00/休館日除く)
公演の最新情報はこちら→http://www.cubeinc.co.jp
お問合せ:キューブ 03-5485-2252(平日12:00〜17:00)
企画・ケムリ研究室:ケラリーノ・サンドロヴィッチ+緒川たまき
製作:キューブ
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