【稽古場レポート】
井上ひさしの異色作にして最高傑作と名高い『藪原検校』がまもなく開幕する。盲目で生まれた杉の市が、盲人の最高位である検校に上り詰めようと悪の限りをつくしていくさまを描いた悪の一代記。主人公・二代目藪原検校こと杉の市は、2012年にもこの役を演じ、絶賛された野村萬斎が演じる。今回は萬斎以外のキャストを一新し、4年ぶり、待望の再演である。2月某日、本作の稽古場を取材した。

この日の稽古場では、だいたい物語の中盤をカンパニーがあたっていた。可動式の傾斜舞台に、張り巡らされた赤い綱。ここに、つつっと水色の綱が渡され、それだけで鮮やかに阿武隈川の場面が出来上がる。物語は、盲太夫を筆頭に、座頭(これも盲人位のひとつである)たちが物語の登場人物たちに扮し、伝えていく形式をとる。シンプルなビジュアルからは、想像力を働かせる演劇的面白さが生まれるとともに、盲人たちが語るがゆえの効果...つまり視覚的要素は極力小さくするという、演出・栗山民也の明確な意思が伝わってくる。
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