2025年7月アーカイブ

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"演劇と音楽の融合"を掲げ、演出家・鈴木勝秀と音楽家・大嶋吾郎が長年にわたる実験と研究の末に築き上げてきた、新感覚の朗読×音楽ライブスタイル──"Reading Rock"。今回は""をテーマにした冒険譚2作品を、天王洲 銀河劇場にて2週にわたって連続上演する。

7月4日(金)~6日(日)に上演されるのは、アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトの小説『ガリバー旅行記』を原作とする『ガリバー』。<小人の国><巨人の国><空中浮遊国><馬の国>という4つの国を旅したガリバーの物語が、ユーモアと鋭い風刺を交えて描かれる。そして711日(金)~13日(日)には、フランスの作家ジュール・ヴェルヌによる長編小説を原作とした『月世界旅行』を上演。月面到着を夢見る男たちの情熱と突き抜けた想像力を、ロックサウンドがさらに鮮やかに彩る。

『ガリバー』では若き医師であり探検家・ガリバー、『月世界旅行』では月を目指す熱き青年インピー・バービケインを演じるのは林翔太。数々の舞台を経験してきた林にとって、意外にも今回が初めての朗読劇となる。作品の魅力、そして挑戦への想いを語ってもらった。

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――初挑戦となる朗読劇。出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか?

林 同年代の俳優仲間や事務所のメンバーが朗読劇に出演する話をたくさん聞く中で、やっと自分にも機会がきたんだと、素直にうれしかったです。ラジオドラマに出演したことはあるので、"台本を読みながら演じる"という意味では経験があるのですが、朗読劇を観たことはなくて。正直なところ、「セリフを完璧に覚えなくてもいいのかな?」なんて、楽観的なイメージを持っていたんです(笑)。普段は稽古初日までに全部覚えて臨むタイプなんですが、今回はスズカツ(鈴木勝秀)さんから「覚えなくていいよ」と言っていただいたので、ちゃんと言えるレベルまで読み込んだうえで、覚えずに稽古に行きました。逆にそれが新鮮で、「本当にこれで大丈夫かな?」って、ドキドキしましたね(笑)。

――新しい感覚の稽古だったんですね。今(取材は6月下旬)、稽古は何日目ですか?

林 3日前から始まって、今日が稽古場の最終日です。

――朗読劇ならではの短期間稽古も、新鮮なのでは?

林 初めての感覚です。以前のラジオドラマのときも、稽古は2回くらいだった記憶があるので、「あ、こういうものなんだな」と思いました。でも今回は2作品分の稽古があるので、そのぶん密度は高いですね。

――『ガリバー』が初週、『月世界旅行』が翌週の上演ですね。

林 はい。最初の2日間は、それぞれの作品の読み合わせをしました。昨日はバンドの皆さんと合流して、『月世界旅行』の音の入り方や、どのセリフがきっかけになるのかを確認して。今日は『ガリバー』のほうを、音楽と合わせます。

――『ガリバー』と『月世界旅行』、それぞれのキャラクターに扮したキービジュアルも印象的です。特に『月世界旅行』のバービケイン役は、紫の髪にリップとネイルという大胆なビジュアル。撮影時のエピソードはありますか?

林 『ガリバー』は自分に近い見た目だったんですけど、『月世界旅行』のビジュアルを見たときは「誰!?」って(笑)。紫のウィッグにリップ、ネイルまで塗って、ガラッと変わった自分に最初は驚きました。でも不思議とすぐに見慣れてきて、気持ちも高まりましたね。

――では、それぞれの役についても教えてください。まず『ガリバー』から。

林 僕が演じるガリバーは、好奇心が旺盛で、旅が好きで、複数の言語も話せる人物。旅行にあまり行かない僕とは真逆ですね(笑)。物語は、彼が4つの国を旅した経験談を語る構成なんですが、バラエティ番組で「こんなことがあったんですよ~」って話すイメージで、なるべく自然に、素に近い感覚で演じています。

――セリフ量も相当ですよね。

林 はい、びっくりしました(笑)。僕、普段は台本にマークをつけないんです。自分のセリフに蛍光ペンで線を引くと、そこだけしか覚えられなくなりそうで。いつもは他の人のセリフも含めて、全部覚えるつもりで向き合っているんです。でも今回はさすがに蛍光ペンを使いました(笑)。本番の照明を考慮してピンクを選んだんですが、台本の半分を超えたあたりで1本使い切ってしまって。念のため2本買っておいて良かったです(笑)

――蛍光ペン1本使い切るなんて...(笑)! では、『月世界旅行』で演じるインピー・バービケインはいかがですか?

林 彼もかなり好奇心旺盛ですね。物語の始まりは戦争の話から。南北戦争が終結し、兵器の需要がなくなったアメリカで、バービケインはもっと高度な砲弾を作りたいという情熱から、月への発射計画を立てるんです。すごい行動力ですよね。僕自身も宇宙には興味があるので、「そうなんだ」と思う知識が台本にたくさん出てきて、読んでいて楽しいです。

――鈴木さんは、バービケインたちの行動を"フロンティア精神"と表現されていました。

林 そうですね。命懸けで未知に挑んでいく感じは、うらやましくもあり、ちょっと怖くもあり...。もし「宇宙に行ける」ってなったら、「死んでもいい」と思えるのかもしれないなぁ。でも、僕は飛行機に乗るときも毎回ちょっと覚悟してますから(笑)。何が起こるかわからないですし。

――絶対安全ってわけじゃないですもんね(笑)。だから旅行も控えめに?

林 そう、飛行機に乗らずに行ける場所を選びがちです(笑)。

――そんな林さんが『月世界旅行』ではロケット砲弾に乗って月を目指すという、かなりスケールの大きな旅に出るんですね。

林 そうなんですよ(笑)。実際、ロケット砲弾の中ってどんな感じなんだろう? って想像しながら演じるのも面白いです。

――演出の鈴木勝秀さんから演技に関する指示はありましたか?

林 明確な指導というより、「あまり役を作り込まなくていい」と言われました。まず『ガリバー』についてですが、台本を読んでみて、ガリバーというキャラクターは"芝居芝居"していないほうがいいなと感じたんです。だからナチュラルに読んでみたら、スズカツさんが「すごくいいね」と言ってくださって。そこで方向性が決まりましたね。『月世界旅行』は物語のスケールも大きいし、月面着陸を目指す話なので、もう少し"芝居寄り"になるかと思っていたんですが、こちらも「毎回、自由に演じていいよ」と言われて。結果として、がっつりした演技指導が入ることはなく、感覚を大事にさせてもらっています。

――共演される田村雄一さんと細見大輔さんは、2022年に上演された『月世界旅行』(主演:塚田僚一)にも出演されていました。田村さんはバービケインに敵対心を抱くニコル大尉役、細見さんは助言を与えるフランス人ミシェル・アルダン役です。おふたりと何か会話はされましたか?

林 本当に自由に演じていらっしゃるおふたりで、いろんな声色を使っていて。僕も自然と引っ張られて、いろいろ試しています。「前回はこういうふうにやっていたよ」と教えてくださったり、「ここで何か振るかも」なんてアドリブを予告してくださったり(笑)。皆さんが初演で作り上げてくださった土台があるからこそ、「ここは遊んでいいんだな」と、僕もすぐに掴むことができました。

――"声色"の幅は、やはり経験によって培われたものなのでしょうか?

林 どうなんでしょうね? でもこれまでに女性役やおじいちゃん役を演じることもあったので(笑)、気づいたらいろんな声を出せるようになっていたのかもしれません。

――ご自身の声については、どんなふうに感じていますか?

林 好きか嫌いかで言えば...特別好きではないかな、嫌いでもないけど(笑)。「大好き」とは胸を張って言えないです。喋っているときに自分の耳に届く声と、録音した声ってまったく違って聞こえるじゃないですか。初めて歌をレコ―ディングしたときは、自分で聴いて「うわ、こんな声してるの!?」ってちょっと衝撃で。でもさすがに今は慣れました(笑)。

――そんな中でも、"声で表現する"ことには楽しさを感じている?

林 感じますね。僕は、わりとナチュラルなお芝居が好きなので、大げさな身振り手振りよりも、声のトーンやニュアンスを変えて表現するほうが性に合っている気がします。だから、今回みたいな朗読劇はすごく楽しいです。

――ちなみに、鈴木さんとご一緒するのは今回が初めてなんですね。

林 はい、初めてです。

――初対面の印象はいかがでしたか?

林 じつは、勝手に「厳しい方なんじゃないか」と思っていたんです。何度もお世話になっている演出家さんから以前にお名前を聞いたことがあったので、この作品の出演が決まったときに「スズカツさんって、どんな方ですか?」ってメールしたんですよ。そしたら「特殊ですが、私は大好きな演出家です」と返ってきて(笑)。

――実際に会ってみて、印象は変わりましたか?

林 とても話しやすい方でした。スズカツさんのほうからいろいろ話しかけてくださいますし、僕も気になることがあればすぐに聞ける雰囲気で、すごくありがたいです。

――その「特殊」という点については...

林 今までも"特殊な方"とはたくさん出会ってきたので...(笑)。冗談はさておき、「ちょっと変わってるな」と思うより、「この方のやり方に自分がどう合わせられるか」を考えるほうで。

――なるほど。鈴木さんに対しても、「台本を読みながら、その場で感じたことを自由に表現してほしい」というスタンスの演出家、という受け止め方なんですね。

林 そうですね。実際、そういう方だと感じています。

――では、音楽についてもお聞きします。大嶋吾郎さんが手がける音楽には、どんな印象をお持ちですか?

林 僕は『ソーホー・シンダーズ』(20192021)でご一緒して以来です。今回はロック寄りの楽曲が多いですが、吾郎さんって本当にどんなジャンルでも作れるんですよ。それに吾郎さんの音楽は、聴いていると想像がどんどん広がっていく感じがして、大好きです。『ガリバー』で言えば、少しスローテンポな楽曲が特にお気に入りで、「このメロディとか、オケで流れてる音、めっちゃいいなぁ」って、毎回しみじみ感じながら歌っています。僕はもともとバンドサウンドが好きで。例えばKinKi Kidsさん。コンサートでは後ろにバンドを入れて、生音で演奏されるじゃないですか。その雰囲気や臨場感が、伝わってくる熱量にすごく心を惹かれます。

――今回も生バンドの中で、歌や芝居ができるのは楽しみですね。では改めて、台本を読んだときの感想を聞かせてください。

林 『ガリバー』は旅のエピソードを通じて、最終的に戦争の話に着地していく構成なんですが、現代とリンクする部分も多いと感じました。後半に、人間が兵器を作る愚かさについて、ガリバーが長ゼリフで語りかける場面があるんです。感情を前面に出して熱く語ることもできると思うんですが、本読みではあえて淡々と冷静に話してみたら、スズカツさんに「すごくいい。ちゃんと戦争について考えていることが伝わってきた」と言っていただけて。でもこれは、「こう演じよう」と狙って作ったわけではなくて、台本を読んで自然と湧いてきた感覚をそのまま出しただけなんです。僕と同じように、お客さんにも何か感じ取ってもらえたら嬉しいですね。

――終戦の8月を前にした7月という時期に、戦争について考えるきっかけがあるのは意義深いと思います。林さんご自身としては、朗読劇に初挑戦する中で課題に感じていることや、吸収したいことはありますか?

林 普段の舞台では稽古を重ねるうちに、「この場面ではこういう感情になる」という""がどんどんできていくんですけど、朗読劇ではそれがあまりないなと感じていて。毎回、微妙にニュアンスを変えて試せるんですよね。前回の通し稽古で真面目に言っていたセリフを、次の通しではちょっとおちゃらけて言ってみたり...そういうトライができるのは面白いです。遊びの余白を見つけていける感覚は、今後の作品にも活かせると思います。

――演技のスタイルとしても、自由度の高さが新鮮なのですね。

林 そうですね。でもそのぶん難しさもあって。僕は相手の目を見て芝居するほうがやりやすいな、と。通常の舞台だと、セットや動きも感情を表現する要素になりますよね。「このセリフでソファに座る」とか、「怒ったら相手の胸ぐらをつかむ」とか。でも朗読劇は"声だけ"で届けるので、本当に難しいなと実感しています。

――セリフを覚えることに慣れている分、台本を持って演じること自体も大変ですか?

林 そうなんです、正直、覚えたほうがラク(笑)。読みながら喋るのって、思った以上に難しいんですよ。あと朗読劇は初めてなので、まだ自分の"ルーティン"が定まっていないのも不安要素で。普段は本番前にひとりで通すのが習慣なんですけど、今回は台本を読んでいい舞台なので、「本番前に何をすればいいんだろう?」って(笑)。1回、早口で全部読んでみるとか...? 何もしなかったら、口が回らなくなりそうで怖いです(笑)。瞬発力も、もう少し鍛えたいですね。

――本番までに林さんの朗読劇ルーティンが決まるのも楽しみにしています(笑)。最後に、公演を楽しみにしている皆さまへ、メッセージをお願いします。

林 朗読劇って、役者が大きく動かず、台本を読みながら演じるからこそ、想像する楽しみがあると思うんです。ガリバーってどんな服を着てるんだろう? どんな見た目なんだろう? 登場人物たちはどんな空間にいるんだろう? そんなふうに、自由にイメージしながら楽しんでもらえたら嬉しいです!

文:豊泉彩乃

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手塚治虫による不朽の名作『ブラック・ジャック』。深い人間ドラマの中には、医療の不平等への批判、人間の尊厳へのまなざし、そして科学と倫理のせめぎ合いなど、多くの社会的テーマが息づいている。そんな医療マンガの金字塔が、演出・栗山民也、脚本・鈴木聡、音楽・笠松泰洋という豪華クリエイター陣の手によってミュージカル化。"命の価値"を真正面から問いかけるミュージカル『ブラック・ジャック』が、628日に幕を開ける。

天才的な腕を持つ孤高の外科医・ブラック・ジャック役に坂本昌行。18年間、双子の姉の体内に存在していた畸形嚢腫(きけいのうしゅ)からブラック・ジャックによって人の姿に生まれ変わったピノコ役に矢吹奈子。安楽死専門の医師ドクター・キリコ役には味方良介、謎の拒食症に悩む女優・真理子役を大空ゆうひ、真理子の叔父で医師の白川役に今井清隆と、錚々たる実力派がそろい、重厚なテーマを歌と演技で浮かび上がらせる。

今回、ブラック・ジャックの助手であり、家族のような存在でもあるピノコ役の矢吹奈子のインタビューが到着。ミュージカル初挑戦となる彼女が、稽古の中で何を感じ、どんな思いでこの役に向き合っているのか──その胸の内を聞いた。

 

――現在(取材は6月中旬)、まさに稽古の真っ最中だそうですね。
矢吹 歌稽古は5月から始まって、最近は通し稽古に入りました。一昨日にはバンドの皆さんも合流してくださって。その日がちょうど私の誕生日だったんです。バンドの生演奏に、共演者の皆さんの美しい生歌でお祝いしていただいて...。特に"きよさん"(今井清隆)のハモリが本当に素晴らしくて! 幸せな時間でした。

――最高の雰囲気で稽古に臨めているんですね。
矢吹 はい。本当に素敵なカンパニーです。

――ミュージカルへの出演は、今回が初めてになりますね。
矢吹 はい。オーディションを受けさせていただいて、合格の知らせを聞いたときは本当にびっくりしました。

――稽古に取り組む中で、心境の変化はありましたか?
矢吹 最初の読み合わせでは、どんなふうにピノコを演じればいいのか全くわからず、探り探りでした。自分なりに模索する中で栗山(民也)さんに演出をつけていただき、「だんだんピノコらしくなってきたね」とスタッフさんにも言っていただけるようになり、何となく感覚を掴んできたかな、と思っています。

――現時点での、ピノコ像"をどう捉えていますか?
矢吹 どんな場面でも、ピノコがいることで空気が和らいだり、癒されたりするような空間を作れたらと思っています。いい意味で、場の空気を壊すような存在といいますか。ピノコは自分の気持ちにとても素直な子なので、その自由さをしっかり表現していきたいですね。

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――栗山さんから印象的だったアドバイスはありますか?
矢吹 「ピノコはブラック・ジャック先生によって形成された子で、人間ではあるけれど"完成形"ではない。成長しきれていない部分もあるから、"普通の子"ではダメなんだよ」とおっしゃっていたのが、とても印象に残っています。実際に栗山さんが「こういう言い方で」と演技を見せてくださるんですが、それが本当に素晴らしくて...! みんなで「ピノコが憑依してる!」と言っているくらい(笑)。そのお芝居を参考に「どうしたら私もああいう演技ができるんだろう?」と考えながら、日々ピノコを作り上げています。

――"完成形じゃない完成形"を目指す...とても繊細な作業ですね。
矢吹 そうなんですよね。歌に関しても、稽古の序盤に「うまくなっちゃダメだよ」と言われて驚きました。初めてのミュージカルで、歌の面でもとても緊張していたんです。アイドルとして歌ってきた経験はあるけれど、ミュージカルの発声は全く違うじゃないですか。だから「うまくなっちゃダメ」と言われたときは「あ、そうなんだ...!」と(笑)。あえて音程を少し外したり、リズムに合わせずに遅らせて歌ったり、踊ったり。身体に染みついた感覚と違うことをやるのは難しいですが、そこも面白い部分ですね。

――初挑戦で、挑むことがたくさんあるのですね。
矢吹 私、無意識なんですけど、歩くだけでも音に合ってしまうみたいなんです(笑)。今はその"無意識"を手放すことに取り組んでいて。大変ですが、今までと全く違うアプローチなので楽しいです。

――アイドルとしての歌との違いも感じているのでは?
矢吹 全然違いますね。アイドルの歌は、何よりも"リズムに合わせること"が大事で、特に(IZ*ONEのメンバーとして)韓国で活動していたときは、ガイドボーカルに限りなく近い形で歌うのが基本だったんです。とにかく聴き込んで"完コピ"するというか。でもミュージカルでは、歌詞を"言葉"として、"セリフ"として届けることが求められる。アイドルのときも歌詞を大切にしていたつもりでしたが、ミュージカルでは、より物語の一部を歌が担っていると感じます。リズムを優先するという考え方とは違うので、最初はかなり苦戦しました。

――苦労も多い一方で、新たな発見もあったのではないでしょうか?
矢吹 はい。稽古中の歌唱練習に加えて、栗山さんにご紹介いただいたボイストレーナーの方のもとでレッスンを受けています。そこで、息の吸い方や整え方をイチから学びました。歌は、""が本当に大事で。普段は引き気味に話すことが多いですが、歌では声をしっかり"前に出す"必要があると教えていただきました。そのためのテクニックを、今まさに学んでいるところです。

――その中で、逆にアイドル時代の経験が活かされていると感じた部分はありますか?
矢吹 ステージ上の立ち位置の感覚ですね。舞台には番号が振られているんですけど、動きながらでも自然と「今ここが何番だな」ってわかるんです。あの音までにここへ移動しなきゃっていう計算も、身体が勝手にやってくれている感じで(笑)。

――まさに"経験値"ですね。劇中で披露する楽曲についても教えていただけますか?
矢吹 ピノコは元気で明るい子なので、そういう曲が多いのかなと思っていたんですが、そういうわけでもなく。約2時間の物語の中で描かれるピノコの成長に合わせて、彼女の内面や想いを表現したナンバーもいくつかありますよ。

――さまざまな表情の"歌声"が聴けそうですね。
矢吹 はい、ぜひ楽しみにしていてください!

――共演者の皆さんも、歌唱力の高い方ばかりです。
矢吹 本当に皆さん、迫力がすごすぎて......! 稽古場にいるのに、まるで本番を観ているかのような感覚になります。特に、きよさんの声量には圧倒されました。稽古前に「あ〜」と軽く発声されるだけで、ものすごく響いていて! 近くでコソコソ話なんてできません(笑)。「私もいつかこんなふうになりたい!」と、毎日憧れながら見させてもらっています。あと、先日、私が歌っていたパートで「この部分、ちょっと聞き取りにくいからセリフに変えようか」と提案があって。その後、振り付けと合わせて練習していたら、大空(ゆうひ)さんが「こういう感じでポーズをつけてみたらどう?」とアドバイスしてくださったんです。宝塚(歌劇団)で長年活躍されてきた方のすごさを改めて実感しましたし、もう、ずっと大空さんのことを見てしまいます(笑)。

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――ブラック・ジャックを演じる坂本昌行さんの印象はいかがですか?
矢吹 ブラック・ジャック先生が3曲ほどをつなげて歌う場面があるんですが、毎回そのシーンに感動しています。感情がしっかり込められていて、先生の想いがまっすぐに伝わってくるので、心が揺さぶられます。

――おふたりで歌うシーンもあるのでしょうか?
矢吹 はい。最初に合わせたときから、違和感なく歌えたんです。歌唱指導の方からも「グループ活動を経験してきたふたりだからか、お互いの呼吸を感じながら歌えていて良かった」と言っていただけて。

――自然な調和があったのですね。
矢吹 そうなんです。この前の通し稽古でも印象的なことがあって。坂本さんに確認したい部分があって、ちょうどタイミングができたので、小道具のコップを持ったまま(笑)、坂本さんのもとへ歩いていったんです。そしたら、坂本さんも同じことを考えていたみたいでバッタリ遭遇して。「あ、ピノコとブラック・ジャックだ!」と感じた瞬間でした。

――まさに! その空気感をより磨いて、ステージ上に持っていけたらいいですね。
矢吹 はい。坂本さんと一緒に踊るシーンもあるんですが、そこはもう完全にお任せしています(笑)。もし私が早く立ち位置についてしまっても、坂本さんが引っ張ってくださると自然と音にハマることがわかっていて。なので安心して、全部預けて(ポーズを取り)待っています(笑)。

――おふたりのコンビネーションも見どころになりそうですね。さて、『ブラック・ジャック』は"命の価値"を問いかける、深いメッセージ性を持つ作品だと思います。矢吹さんは、台本からどのようなことを受け取りましたか?
矢吹 題材となっているのは"生と死"。ピノコは、ブラック・ジャック先生のおかげで命を得た存在だからこそ、"生きている"ことへの感謝を強く感じている子なんです。その"生きる楽しさ"を、(大空ゆうひ演じる)真理子さんに伝えていく場面があって。そのピノコの姿を通して、観てくださる皆さんにも「生きていることは当たり前じゃない」と、改めて感じてもらえたら嬉しいです。もちろん、"生きることの楽しさ"もお伝えできればと思っています。

――ピノコを通して、""について考えるきっかけになる物語ですね。
矢吹 物語の中で、ピノコが周囲の人たちに"みんな生きている理由"を尋ねるシーンがあるんです。それぞれの答えを聞いて、ピノコ自身も何かに気づいていく。そのやりとりがとても印象的で、いろいろなことを考えさせられる場面だなと思っています。

――そんなミュージカルを携えて、全国6都市を巡回します。
矢吹 兵庫公演を除いては各地1日公演なので、お会いできるお客様は限られてしまうかもしれませんが、それでも全国をまわって、多くの方に『ブラック・ジャック』を届けられることが本当に嬉しいです。

――では最後に、公演を楽しみにしている皆さまへメッセージをお願いします。
矢吹 今回が初めてのミュージカル出演なので、開幕を前にドキドキが募るばかりですが...物語が始まれば、自然とセリフが出てくるように、ピノコとして生きられるように頑張ります。観に来てくださる皆さんにとって、"生きること"について改めて考えるきっかけになったら嬉しいですし、何かひとつでも心に残るものを持ち帰っていただけるよう、私も全力で舞台に臨みたいと思います。

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文:豊泉彩乃/ヘアメイク:舩戸美咲

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