東京・歌舞伎座ではすっかり恒例となった「秀山祭九月大歌舞伎」が9月1日(日)に開幕しました。
近代の歌舞伎を代表する名優として知られている、初代吉右衛門の功績を顕彰し、その芸を継承することを目的とした「秀山祭」は今年で14年目、12回を迎えます。
初日の前日、8月31日に「寺子屋」(夜の部)の舞台稽古が行われ、松王丸の中村吉右衛門さん、武部源蔵の松本幸四郎さん、松王の女房・千代の尾上菊之助さんが囲み取材に応じました。
「秀山祭」への意気込みを聞かれた吉右衛門さんは「意気込みですか?もう息も切れていますよ(笑)」と冗談めかしつつも、「初日から千秋楽まで、みなさんが健康に気をつけて無事に終えていただければ、私は責任者としてとても幸いです。初代吉右衛門という人は、湯殿の長兵衞にしろ、沼津にしろ、寺子屋にしろ、松浦にしろ、役の気持ちをつかんだ役者でした。そのことを歌舞伎座に来て、芝居を観ていただいて、少しでもわかっていただけたら幸せです」と話されました。
幸四郎さんと菊之助さんはそれぞれ「毎年参加させていただき、いろんなお役をやらせていただき、本当にありがたいです。私にとって初代吉右衛門は曾祖父にあたりますから、(秀山祭は)特別な興行として取り組まさせていただいております。この9月は、特に大きなお役をやらせていただきますが、一日一日を100%出し切れるよう勤めさせていただきます」(幸四郎さん)、「三代目歌六さんの百回忌追善記念興行に、岳父の下、私、そして丑之助とともに出演が叶いましたこと、こんな嬉しいことはございません。毎年岳父の側に出させていただきまして、ひとつひとつご指導いただきまして財産をいただいている気持ちです」(菊之助さん)とコメントされました。
また、「寺子屋」について聞かれると、吉右衛門さんは「初代吉右衛門は源蔵も松王も両方勤めてまして、好評を得たお役でございます。今日(こんにち)、いろいろな型が残っておりますけれども、私のうちに伝わる型を源蔵をされる幸四郎さんにお教えしました。それが忠実に再現されましたら、お客様の御心をつかめるんじゃないかと思います」と話し、それを受けた幸四郎さんは「こんな幸せな時間はないと思っております。毎日、今日が最後というつもりで精一杯勤めます」と真剣な面持ちで答えていました。
吉右衛門さんが勤める松王丸の女房を演じる菊之助さんは「私自身緊張しておりますが、舞台には(息子の)丑之助がおりまして2倍の緊張でございます。その緊張に負けないよう、自分の役になりきって勤めたいと思います」と話すと、吉右衛門さんが「親御さんは緊張しておりますけれども、私としてはこんな嬉しいことはございません。孫が出てきたら"大丈夫かな、大丈夫かな、あーよくできた!"と微笑んでおります」と満面の笑顔で話されていました。
公演は9月1日(日)から25日(水)まで、東京・歌舞伎座で上演。
吉右衛門さんは昼の部「沼津」の十兵衛、夜の部「寺子屋」の松王丸、幸四郎さんは昼の部「幡随長兵衛」の長兵衛、「寺子屋」源蔵、夜の部「勧進帳」の弁慶を仁左衛門さんと交互出演(仁左衛門さんが弁慶の日は富樫で出演)、菊之助さんは「寺子屋」千代を菅秀才(初役)の丑之助さんと一緒に出演します。
三世歌六の百回忌追善狂言は、昼の部「沼津」、夜の部「松浦の太鼓」の2演目です。
チケットはぴあにて発売中