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2019年に愛媛の内子座にて上演された「あんまと泥棒」が本多劇場に場所を移しての再演となった本作、観劇レポートをお届けします。

 

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まずは舞台中央でのオープニングトークから始まります。さすがの2人のやり取りに客席が笑いに包まれる中でそれぞれが役衣装に着替え、いつの間にか「あんまと泥棒」の芝居が始まります。
江戸の市井での出来事を演じつつ、「今」ならではのアドリブやコントを交えながら軽妙な2人芝居が繰り広げられます。

  
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           撮影:宮川舞子

 

近藤さん演じる泥棒・権太郎が、南原さん演じる目の見えない秀の市の家へ押し入り、お互いが身の上話をしていく中で権太郎の心に変化が生じ、ついには盗みを諦めますが、最後には・・?
温かな笑いが溢れるあっという間の80分間。
このようなご時世だからこそ観て良かった、と元気をもらえる作品です。

 

【あらすじ】
夜更け、泥棒・権太郎(近藤)は、あんま・秀の市(南原)の家へ泥棒に押し入る。権太郎は、秀の市が高利貸しの烏金を貯めていると噂を聞きつけ、秀の市に金を出すように迫る。
しかし、秀の市はしらばくれて、利息はもらっているもののほとんど貸し倒ればかりだと言い逃れる。権太郎は金のありかを白状させようとするが、秀の市はとぼけるばかり。
やがて、二人は台所にある焼酎を飲み始め、お互いの身の上話を始める。そのうち、日が昇り始めるので、権太郎が家の中を物色し始めると、位牌が出てくる。すると、秀の市は死んだ女房に仏壇を買ってやりたいが、金が貯まらないと言って涙を流す。これを気の毒に思った権太郎は、盗みを諦め、秀の市に金まで与え出ていく。これに感謝する秀の市だが...。

 

【公演情報】
2020/11/27(金)~11/29(日) 本多劇場 (東京都)

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オリジナルミュージカルや韓国発のミュージカルを製作してきたatlasによるミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」。9月24日(木)・25日(金)よりオンライン配信を予定している当コンサートの収録が8月下旬、東京・COTTON CLUBにて行われた。歌われるミュージカルナンバーは、『あなたの初恋探します』『Indigo Tomato』『SMOKE』『最終陳述』『カリソメノカタビラ』『アンクル・トム』、そして最新作『BLUE RAIN』の計7作の劇中歌。それぞれの作品に出演していた彩吹真央池田有希子上口耕平大山真志木暮真一郎坂元健児新納慎也東山光明水夏希山田元吉野圭吾が顔を揃え、MCとして駒田一が盛り上げた。この収録の模様をレポートする。

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会場は大人の空間・COTTON CLUB。本来、観客が入るスペースには複数台のカメラが立ち並び、カメラレールも敷かれている。12人の出演者たちはラグジュアリーな会場の雰囲気にふさわしく、フォーマルな装い。ただ、流れる空気はフランクで楽し気。実際には共演経験のない間柄のキャストもいるが、それを感じさせない和やかさがあるのは、atlas製作の特徴だろう。

収録はブロックごとに分けて行われた。オープニングはatlas製作ミュージカルの記念すべき第一作『あなたの初恋探します』より。MCも務める駒田一が本作品のプロローグでもある「DESTINY」を軽快に歌う。ノリの良さそのままに『Indigo Tomato』の「Brain Man」で大山真志がカッコよく決め、『最終陳述』より「ブルーノ」を山田元がしっとりと歌い上げる。本編を未見の方もご安心を。MCコーナーでは、これらの作品がどういった内容のものなのか、駒田が巧みに聞き出している。

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続けて水夏希が主演したオリジナルミュージカル、『カリソメノカタビラ』のコーナー。デオン・ド・ボーモン役の水、ボーマルシェ役の坂元健児がムーディに、めくるめく歴史絵巻へといざなう。斉藤恒芳が手掛けた楽曲の美麗さも、改めてかみしめる。さらに、本編では出演していなかった彩吹真央がマリー・アントワネットに扮し、水のデオンとデュエットする楽曲も。ここでしか聴けない組み合わせはミュージカルコンサートならではの"お楽しみ"だ。水と彩吹の仲良しコンビはトークコーナーでも気の合ったところを見せていたので、そちらも乞うご期待。

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その後、吉野圭吾&新納慎也が出演はしていない意外な楽曲で踊りまくったり......とファン仰天&垂涎のナンバーなどを挟み、第一部のクライマックス『SMOKE』コーナーへ。『SMOKE』はこれまでに三たび上演を重ねる、atlasミュージカルの代表作。ミステリータッチのストーリー展開の中、芸術家の業や生きることの苦しみと希望を描き出すディープな3人ミュージカルだ。本作に出演経験のある大山真志、池田有希子、木暮真一郎、彩吹真央が劇中ナンバー5曲を続けて披露。本編上演時、俳優たちの魂を削るような熱演も評判だったが、ナンバーがかかるとその時の感覚を思い出すのか、コンサートでもみな火花を散らしあい、大熱唱。浅草九劇バージョンの超:大山真志とシアターウエストバージョンの紅:彩吹真央という、組み合わせを超えたデュエットも披露。ラストの「翼」の高揚感、開放感もひときわ心地が良かった。なお『SMOKE』トークコーナーでは人数が多いためこのご時世らしくパーテーションが登場。しかし構成を手掛ける広崎うらんが「でもこれ、SMOKEの世界よね!」と発言したのを皮切りに、パーテーションを劇中に登場する鏡に見立ててマイムをしてみたり......と、あくまでもポジティブなキャスト陣。ちなみにここのトークも本番中に起きたハプニングのエピソードなど楽しい話題満載だったのでお楽しみに。

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続いて第二部の収録へ。二部は『最終陳述』コーナーよりスタート。こちらは昨年上演されたふたりミュージカルで、半年後にはコンサート版も上演された人気作。本作からはガリレオ・ガリレイを演じた山田元が登場。今回は大山真志、坂元健児が加わり、温もりのあるチャーミングな作品の風を伝えた。

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ふたたび『あなたの初恋探します』のナンバーを挟み、クライマックスは『アンクル・トム』と最新作『BLUE RAIN』のリミックス。"雨"をキーワードにリンクする2作品、計10曲、約30分ノンストップのパフォーマンスだ。『アンクル・トム』出演経験者は新納慎也、上口耕平、池田有希子、山田元。『BLUE RAIN』からは吉野圭吾、水夏希、東山光明、池田有希子。『BLUE RAIN』では水が扮するクラブ歌手ヘイドンがクラブで歌うタイトルナンバーがこの日の会場であるCOTTON CLUBで歌われる圧倒的リアリティ、『アンクル・トム』で老人役に挑戦した新納が、衣裳やメイクはそのままに声色だけで役柄を蘇らせた迫力、精神的に追い詰められていく役柄を演じた『アンクル・トム』の上口と『BLUE RAIN』の東山がステージ上でクロスする演出......。見どころ多数、「これが見たかった!」と「そうきたか!」がミックスされた憎い構成になっているので、2演目のファンは楽しみにしていてほしい。

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公演から時間がたっていても、それぞれの俳優の肌に役がしっくりなじんでいるのだろう、鮮やかにその役が蘇る。数曲のピックアップでも、一気に当時の作品、当時の役に入り込む俳優陣の熱演・熱唱にワクワクしたり、ホロリときたり、胸がキュッとしたり。7つのミュージカルをギュッと濃縮した"いいとこ取り"のコンサート、フィナーレは全員登場、ちょっと意外な作品からのナンバーをみんなで踊りまくり、5時間超にわたる濃密な収録は終了した。コロナ禍という状況の中オンライン配信という選択がなされた本コンサート。もちろん生の楽しさは何物にも代えがたいのは百も承知。ただ、「最後のキメはこのカメラに向かって」といった普段のステージでの演出ではありえない指示や、"あえてカメラの前を横切る"といった演出もつけられていたので、「完成映像はどんなカッコいいものになっているんだろう!?」という期待感も生まれた。今だからこそ実現したオンラインコンサート、7つの作品のファンはもちろん、広くミュージカルファン必見のものになりそうだ。(取材・文:平野祥恵)

ミュージカルコンサート「"atlas" musical collection 〜meets friends〜」は配信はPIA LIVE STREAMINGにて。視聴チケットは9月18日(金)発売予定。視聴期間や内容の詳細は公式ホームページ(http://g-atlas.jp/amc/)にて。

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【開幕ニュース】

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花屋で働く冴えない青年が手に入れた奇妙な植物。不思議な魅力があるその植物は、水ではなく人間の血を要求してきて......。1960年の同名ホラー映画を『美女と野獣』『アラジン』などを手掛けた名コンビ、ハワード・アシュマン(脚本・歌詞)とアラン・メンケン(音楽)がミュージカル化した人気作『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』が、久々に日本で上演されている。主演をWキャストで務めるのは、鈴木拡樹三浦宏規。今をときめくイケメン若手俳優のふたりが、なんとも冴えない青年をチャーミングに大熱演。新型コロナウィルス感染対策により当初の予定より1週間後ろにずれ、3月20日が初日となったが、ナンセンスなホラーコメディで、鬱屈した空気をパワフルに笑い飛ばしている。
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大阪公演を経て、2月1日には東京公演初日を迎えた『CHESS THE MUSICAL』
チェスの世界大会を舞台に、米ソ冷戦という時代背景に翻弄されている人々のドラマを描き出すミュージカルです。

今回の上演ではラミン・カリムルーサマンサ・バークスルーク・ウォルシュ佐藤隆紀(LE VELVETS)をメインにした日英精鋭のキャストが、ベニー・アンダーソン&ビョルン・ウルヴァースというABBAのふたりが生み出した珠玉の音楽に溢れるこの作品を素晴らしい歌唱力で歌い上げ、客席も大盛り上がり!

東京公演が開いたばかりの2月2日にはラミン・カリムルー&ルーク・ウォルシュ&佐藤隆紀によるアフタートークが開催されました。
その模様をレポートします!CHESS2020-3-01_2163.JPG

劇中ではソ連のチェスチャンピオン、アナトリーを演じるラミンさん。
文句なく、いま世界トップクラスの実力&人気を持つミュージカルスターです!
まずは日本語で「こんばんはございます。きてくれてありがとうございます。あいしてる」とご挨拶し、客席も大盛り上がり!
「毎日毎日楽しく過ごしています。毎回、公演をするたびにちょっと寂しくなる。ひとつショーが減ってしまう、そしてまた帰国する日が近付いているなって思って」と現在の心境を。

▽ ラミン・カリムルーCHESS2020-3-03_2128.JPG


アメリカ代表にしてディフェンディングチャンピオン、フレディを演じるのはイギリスの新星、ルークさん。
「来てくださってありがとうございます。そして(アフタートークに)残ってくださってありがとうございます。今日のお客さまが最高だったと思います!」とご挨拶。
さらに「大阪も大好きですが、東京も好きです。そして本当に昨日(初日)の観客の皆さんが素晴らしかった。たくさん歓声をいただき、キャストも興奮しました。でも今日のお客さまも同じく素晴らしかった。私たちが本当にいい作品だと思って作り上げたものを、このようにご覧いただいてありがとうございます」と話します。
ルークさん、このアフタートーク中、多方面に「感謝」を述べていらっしゃいました。人柄がにじみでますね。

▽ ルーク・ウォルシュCHESS2020-3-05_2114.JPG

 
チェスの審判(アービター)役は、日本から佐藤隆紀さん。
ラミン&ルークのご挨拶の流れで英語で「Ladies and gentlemen,Thank you,I Love you」と英語でご挨拶をし、「本当に今回、アンサンブル含め日本勢も頑張っていて、1月3日頃かな、僕がまだセリフも半分くらいしか覚えていなかったときに、アンサンブルの皆さんが歌詞を暗譜して振付している動画が送られてきて、めちゃくちゃ焦りました。そこから寝られない日々が続きました......。でもみんなの「頑張ろう」「いいものを作ろう」という意識が、この作品を良いものにするパワーになったんじゃないかなと感じています」と現在の気持ちを。

▽ 佐藤隆紀CHESS2020-3-07_2157.JPG

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清水邦夫氏の傑作戯曲『楽屋 -流れ去るものはやがてなつかしき-』 が1月17日より浅草九劇にて上演中だ。

1977年の初演より、様々な演出家・キャストで上演を重ねている"女優4人芝居"を、男優のみで上演する話題の舞台。
これまで数多の名女優たちが演じてきた"女優"役には、伊藤裕一伊勢大貴大高洋夫、そして佐藤アツヒロが挑んでいる。

本作のオフィシャルレポートをお届けします。



男優4人が密やかに大胆に演じる"女優たちの物語"



伊藤裕一、伊勢大貴、大高洋夫、佐藤アツヒロが出演する舞台『楽屋 ―流れ去るものはやがてなつかしき―』が1月17日、浅草九劇で開幕した。演出は西森英行。

"日本で最も上演されている戯曲"とも言われる、清水邦夫の傑作戯曲『楽屋』。誰が数えたかその真偽のほどは定かではないが、2016年には18団体がそれぞれにこの作品を上演する「楽屋フェスティバル」なども開催されるほど、演劇人に愛されている戯曲であることは間違いない。登場するのは、楽屋でブラックな会話をあけすけにしている女優Aと女優B、上演中の舞台作品『かもめ』のヒロイン役の女優C、長年Cのプロンプターを務めていた女優D。つまり、女優4人の会話劇である。これまでも錚々たる女優たちが挑んできたこの作品を、今回はオールメールで上演するというのが注目ポイントだ。

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▽ 伊勢大貴 2BT_0173.JPG
▽ 大高洋夫3GP_0118.JPG

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令和元年も残すところあと一ヶ月。

今年の掉尾を飾る「十二月大歌舞伎」が東京・歌舞伎座で上演中です。

その昼の部を観劇してきました。

 

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今月は坂東玉三郎を中心とした座組です。

次世代を担う若手にも大役を勤める機会をと、昼の部は演目や出演者が日にちによって替わる構成になっています。(Aプロ・Bプロ)

ひとつ目の『たぬき』は両方のプログラム共通です。

ふたつ目は、【Aプロ】『村松風二人汐汲』【Bプロ】『保名』となります。

 

▼写真は『村松風二人汐汲』

(左から)村雨=中村児太郎、松風=中村梅枝

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3つ目の『阿古屋』は【Aプロ】が玉三郎、【Bプロ】では中村梅枝中村児太郎が日替りで勤めます。

 

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『たぬき』は1953年に初演された、大佛次郎作の新作歌舞伎。

前回の上演から約5年ぶりで、今回新たに石川耕士が演出を手掛けました。

物語は、コレラが大流行している江戸を舞台に、死んだと思った男が火葬場で生き返り、思案あって元の生活には戻らず、過去と決別して別人として第二の人生を歩むが......というお話。

主人公の男・柏屋金兵衛を演じるのは、これが初役となる市川中車(香川照之)。

金兵衛は、柏屋の婿養子に収まったものの、放蕩三昧でお世辞にも良い夫、良い父とは呼べないような男。

焼かれる寸前に生き返ったものの、自宅へ帰っても妻からは歓迎されないだろうと思い、それならいっそ、若い妾と楽しく暮らす人生も悪くないな、と考えた金兵衛。

ところが、この妾にも裏切られていたとわかり、失意のどん底に落ちていきます。

前半はコミカルな場面もあり、喜劇としても楽しめます。

後半は名前を変え、別人として生きてきた金兵衛が、以前の知り合いにあったことから、ある決断をするまでが描かれています。

 

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▲『たぬき』(左から)太鼓持蝶作=坂東彦三郎、柏屋金兵衛=市川中車

 

この作品は、喜劇というより、シニカルな視点や親子の情愛といった人間の本質を突いた深さがあり、演劇的な視点で観ても面白いなと思いました。

中車は、緩急交えた芝居で場面ごとに違う顔をみせ、複雑な男の心情を表現していました。

また、金兵衛との絡みが多い太鼓持・蝶作を坂東彦三郎が好演、その妹で妾お染を中村児太郎という配役です。

 

ところで、『たぬき』というタイトル、響きは可愛いですが、人間を「化けの皮を被って化かし合いをしているたぬき」に見立てて付けたようで、なんとも皮肉が利いていますね。

 

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平間壮一主演のColoring Musical『Indigo Tomato』 の再演が現在、いわき公演を皮切りに全国で上演中です。
昨年初演され、好評を博した小林香 作・演出のオリジナルミュージカル
開幕レポートも先日お届けしていますが、独自取材の公演レポートも掲載します!
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物語は自閉症スペクトラムなどの障害がある一方で、数学や記憶に突出した才能を持つサヴァン症候群の青年タカシが主人公。
その才能に目をつけたテレビマンにクイズ番組への出演を誘われたことをきっかけに、タカシが一歩踏み出し、また彼を取り巻く人々にも少しの変化が生まれていくさまを、優しく描いていく作品です。

革命や戦いといったドラマチックな出来事はおこりませんが、日常にあるありふれたものが持つきらめきに改めて気付かせてくれるような、そんな素敵なミュージカル
たった5人のキャストが存分にその魅力を発揮し、オリジナルの美しい楽曲(特に中盤の『青い星座』は名曲!)もとても印象的です。

主人公タカシ=平間壮一さん は、初演時もその熱演が絶賛されていましたが、今回はさらに自然に、タカシ君が"そこ"にいます。
タカシは自閉症スペクトラムで、毎日きまった行動を繰り返すことに安心をする。突発的なことが苦手。そして数学の天才、共感覚の持ち主。
自分の世界に閉じこもりがちだった彼ですが、家族を思う気持ちから、一歩社会に踏み出すことを決意します。
好きなものは、トマトジュース。
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11月1日、東京・歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」が開幕しました。

ところで、11月の歌舞伎座興行にはなぜ"顔見世"と付くのか知っていますか?
その起源は江戸時代に遡ります。

当時、座元と役者の契約期間は1年で、向こう1年この顔ぶれでやりますよ、と観客にお披露目する"顔見世"興行は一大イベントでした。

けれども時代の変化とともにそうした習慣がなくなり、一時期途絶えていましたが、昭和32年に歌舞伎座の"顔見世"が復活します。

それから60余年、今ではすっかり秋の風物詩となった顔見世興行。

その昼夜の舞台を観劇してきました。

 

 
当月は、昼の部『研辰の討たれ』『関三奴』『髪結新三』

夜の部『菊畑』『連獅子』『市松小僧の女』の6演目を上演しています。

 
さて、『研辰の討たれ』と聞くと、演劇ファンなら野田秀樹が十八代目勘三郎(当時は勘九郎)と創った『野田版 研辰の討たれ』を思い浮かべる方も多いでしょう。

今月歌舞伎座で上演しているのは、作・木村綿花、脚色・平田兼三郎の言うなればオリジナル版"研辰"です。

この作品、上演機会はそれほど多くなく、歌舞伎座での上演は今から37年前の昭和57年以来となります。

 

物語は、元町人で研屋の守山辰次が殿様にうまいこと取り入り、武士に取り立てられたものの、元来の自分本意な性格と口達者が災いし、家老の逆鱗に触れてしまいます。家老への遺恨から騙し討ちで殺したあげく逃亡してしまう辰次。

親を殺された家老の息子たちは、仇討ちをすべく辰次を追って旅に出る。

かくして辰次の運命は、、、というお話。

 

なりふり構わず逃げ回る辰次の行動がコミカルに描かれているので、喜劇として見れば笑える場面が随所にあります。

一方で、武士の矜恃であったり、仇討ちを見物する群衆心理の怖さなど、何が正しくて何が間違っているのか、善悪だけでは語れない観る側に問いかけを残すような側面もあるちょっと変わった作品です。

 

辰次を演じるのは幸四郎

7年前に大阪松竹座で勤めているので2度目の挑戦です。

臆病者で卑怯者という好感度ゼロに等しい男をどう演じるかでドラマの見え方が大きく変わりそうですが、幸四郎は徹底的に"生"に執着する姿を笑いに転換させ、憎めない辰次像を創り上げていました。

特筆すべきは幸四郎の"オモシロ"へのこだわり。

ザ・ドリフターズ好きを公言しているだけあって、そこまでやるの!?と思うような場面も多々あり。

汗だくで奮闘している姿に思わず"アッパレじゃ!"と声援を贈りたくなりました。

 

201911gekipia_togitatsu.jpg『研辰の討たれ』

左より平井才次郎=坂東亀蔵、守山辰次=松本幸四郎、平井九市郎=坂東彦三郎

 

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■『ビッグ・フィッシュ』2019 vol.5■

ティム・バートン監督の傑作映画をもとにしたミュージカル『ビッグ・フィッシュ』が11月1日、東京・シアタークリエで開幕した。日本では白井晃演出で2017年に初演。ファンタジックな世界観の中に家族の大切さをしっかり描き出し、好評を博した。今回はその好評を受け、2年半ぶりの再演。川平慈英浦井健治霧矢大夢夢咲ねねらオリジナルキャストが揃い、夢のように美しくも、観る者が自分の人生と照らしあわさずにはいられない普遍的な作品を紡ぎだしている。
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物語の主人公は、自らの体験談を現実にはありえないほど大げさに盛って語る男、エドワード。小さい頃に魔女に自分の死に方を予言された話、人魚と恋をした話、洞窟の巨人と友だちになった話、サーカスで最愛の女性と出会った話......。その奇想天外な話を聞いて育った息子のウィルは、大人になるにつれ現実味のない父親の話を信じなくなり、さらにはあることをきっかけに父子の間には大きな亀裂が入ってしまう。だがエドワードが病気になり、ウィルは父の話の真実がどこにあったのかを探ろうとする......。
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劇場を初演の日生劇場よりひとまわり小さいサイズのシアタークリエに移し《12 chairs version》と冠するアザーバージョンでの上演となった今年の公演。だが演出の白井晃が「シンプルな空間にしようとは思っていない、初演の空間をできるだけ凝縮した形に」と語っていたように、物足りなさは一切感じない。白井の繊細な演出や、印象的な美しい舞台セットも健在だ。キャストは初演時の22名から12人の少数精鋭となったが、その分キャストひとりひとりが様々なシーンに登場。浦井や霧矢、夢咲らメインキャストも、めまぐるしく衣裳を替え、様々な役に扮する。特に彼らがエドワードが語る冒険譚のキャラクターとして登場することが増えたことから演劇ならではの面白さが増し、さらに劇中劇感が色濃くなったことで"物語を紡ぐ楽しさ"がより強く伝わってくる。これは『ビッグ・フィッシュ』という作品が訴える大きなテーマにも通じる。人生には物語が、夢が大切だ。誰もが自分の人生の主人公だ――。それは、泣きたくなるほどにあたたかく優しく、力強い人生賛歌だ。

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現在歌舞伎座にて「芸術祭十月大歌舞伎」が上演中です。

第74回文化庁芸術祭参加公演として上演されている、夜の部を観劇してきました。

 

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演目は、通し狂言『三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)』舞踊『二人静(ふたりしずか)』のふたつです。

『三人吉三巴白浪』を歌舞伎座で序幕から大詰まで通しで上演するのは2004年以来、15年ぶり。

同じ"吉三"という名を持つ3人の盗賊たちと、百両の金と短刀をめぐる因果話を描いています。

和尚吉三を尾上松緑、お坊吉三を片岡愛之助、お嬢吉三を尾上松也(偶数日)と中村梅枝(奇数日)がダブルチャストで勤めます。

通称『三人吉三』と呼ばれる本作は、河竹黙阿弥の代表作のひとつと言われ、特に序幕の「大川端庚申塚の場」は上演回数も多く非常に人気があります。

振袖姿の美しい女に化けた男=お嬢が、正体を現して「月も朧に白魚の~」と謳うように聞かせる七五調の名台詞は、大向こうから「待ってました!」と声がかかるほど有名な場面。

他にも、百両の金を巡って斬りあっていたお坊とお嬢を諌める和尚の男気や、3人が兄弟の契りを結ぶ場面も粋な演出で、見どころ満載です。

 

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 ▲『三人吉三巴白浪』
(左よりお嬢吉三=尾上松也、和尚吉三=尾上松緑、お坊吉三=片岡愛之助)

 

けれども、『三人吉三』の本当の面白さは、物語そのものにあります。

「庚申丸」と呼ばれる名刀、そして百両の金にまつわる因果話は、彼らの親の代にまで遡るなかなかに根深い話なのです。

主人と従者、親と子、男と女、悪事と祟り、、、様々な要素が絡まりあう中、巧妙なパズルを解き明かしていくようにやがてひとつに繋がっていくと......抗いようのない宿命を背負った3人の姿が浮き彫りになっていきます。

ストーリー展開の巧みさや、ままならない運命に翻弄される登場人物たちの切ない思いは、通し上演で観てはじめて全貌がわかる仕掛けなのです。

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